アンコンシャスバイアスがパワハラ加害者の行動に与える影響とは?

Column – 73
【パワハラ加害者・パワハラ行為者への対応方法の豆知識】
アンコンシャスバイアスがパワハラ加害者の行動に与える影響とは?

Column – 73


職場におけるパワーハラスメントは、意識的な悪意だけでなく、本人が気づかない「無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)」によって引き起こされることがあります。 本記事では、アンコンシャスバイアスがパワハラ加害者の心理にどう作用するのか、そしてそれにどう対応すべきかをわかりやすく解説します。

アンコンシャスバイアスとは?

「アンコンシャスバイアス(Unconscious Bias)」とは、日本語で「無意識の偏見」や「無意識の思い込み」と訳される心理的傾向です。 人は日常生活の中で膨大な情報を処理しなければなりません。そのため、過去の経験や社会的刷り込みをもとに、無意識のうちに物事を判断しようとします。 これが偏見や先入観となり、特定の人や属性に対して偏った対応をしてしまうのです。

たとえば「若い社員は頼りない」「高齢者はITに弱い」「女性より男性の方が論理的」「外国人は日本語が通じにくい」といった認識は、その多くが科学的根拠のない思い込みにすぎません。 しかし、本人には自覚がないため、そのバイアスによって他者を不当に評価したり、発言や行動が差別的になったりしてしまうのです。

アンコンシャスバイアスは、必ずしも悪意を持って生じるわけではありません。むしろ「誰にでもあるもの」であり、年齢や性別、立場に関係なく、人間である以上避けられない部分でもあります。 問題は、その偏見に気づかないまま意思決定や人間関係を進めてしまうことにあります。

代表的なアンコンシャスバイアスの例

  • 性別バイアス:「男性はリーダー向き」「女性は感情的」などの思い込み。
  • 年齢バイアス:「若い人には責任ある仕事を任せられない」など。
  • 外見バイアス:服装や髪型、体型などで能力や性格を決めつける。
  • 所属バイアス:出身校・前職・地域などに基づいて人を判断する。
  • 育児・介護バイアス:育児や介護をしている人は「戦力にならない」と見なす。

このようなバイアスは、採用・昇進・人事評価・職場での発言機会など、あらゆる場面で無意識に影響を及ぼします。 結果的に、当事者の能力が正当に評価されなかったり、職場の多様性が損なわれたりするリスクを高めます。

アンコンシャスバイアスを完全になくすことはできませんが、「自分にも偏見があるかもしれない」と意識し、立ち止まって考えることが重要です。 それによって、職場内での不公平やパワーハラスメントを未然に防ぐ第一歩となります。

パワハラ加害者の心理的背景

パワハラを行う人の中には、以下のような心理的要因が影響していることがあります。

  • 劣等感の裏返し:自分に自信がない人が、他人を攻撃することで優位に立とうとする。
  • ストレスの転嫁:仕事や家庭のストレスを、部下や後輩に向けて発散する。
  • 権威主義的な性格:上下関係に敏感で、立場が下の人には強く当たる傾向がある。
  • 組織文化の影響:過去に「厳しく指導されるのが当たり前」という環境で育った場合、そのスタイルを正しいと思い込みやすい。

アンコンシャスバイアスがパワハラを引き起こす仕組み

アンコンシャスバイアスがあると、特定の人に対して「どうせ〇〇に決まっている」といった見方を無意識にしてしまいます。 その結果、公平な評価がされなくなり、本人にとっては「正当な指導」のつもりでも、相手からすれば「理不尽な攻撃」に見えることがあります。

たとえば、「男性は論理的、女性は感情的」という偏見を持っている人がいた場合、女性部下に対してのみ厳しく叱責するなど、無自覚の差別が起きやすくなります。

アンコンシャスバイアスを抑える職場対応

アンコンシャスバイアスは個人だけの問題ではなく、組織全体で向き合うべき課題です。職場での対人関係や評価、コミュニケーションに影響を及ぼし、放置すればパワハラや差別的な言動を助長する恐れもあります。 以下に、企業・組織が実践すべき具体的な対策を紹介します。

1. アンコンシャスバイアスに関する研修を定期的に実施する

最も効果的な対策のひとつが、全社員を対象とした「アンコンシャスバイアス研修」の実施です。研修では、自分自身の中にどのようなバイアスが潜んでいるかに気づくきっかけを提供し、 ケーススタディやロールプレイなどを通じて、偏見を意識的に取り除くトレーニングを行います。

また、年1回の実施ではなく、継続的な振り返りの機会(フォローアップセミナーなど)を設けることで、学びが定着しやすくなります。

2. 評価・人事制度の透明化

昇進・人事評価・報酬に関わる制度を見直し、主観的な判断に依存しすぎない評価基準を整備することも重要です。 たとえば、「〇〇さんはしっかりしているから」「なんとなく不安」などの印象による評価が介在すると、アンコンシャスバイアスの影響を強く受けるリスクがあります。

明確な業務目標や達成度、行動指標に基づいた「行動評価シート」や「360度評価」などの導入も有効です。

3. 意見を言いやすい職場環境をつくる

発言しづらい雰囲気があると、バイアスによる不当な扱いを受けても、被害者が声を上げにくくなってしまいます。 上司や経営陣は、部下の意見を遮らずに傾聴し、多様な考え方を歓迎する姿勢を見せる必要があります。

定期的な1on1ミーティングや、無記名のフィードバック制度を導入することで、組織内の“声”をすくい上げやすくなります。

4. ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進

多様な人材が尊重され、活躍できる職場環境づくりは、アンコンシャスバイアスの予防につながります。 性別、年齢、国籍、障がいの有無、性的指向など、異なるバックグラウンドを持つ人々と日常的に協働することで、「自分の当たり前」が他者にとってそうではないと気づくきっかけになります。

D&Iの方針を明文化し、ポスター掲示や社内報で発信するなど、組織全体で共有する取り組みも効果的です。

5. 管理職への意識改革と責任の明確化

職場文化は、管理職の言動や価値観によって大きく左右されます。特に、評価権限や指導権限を持つ立場の人には、バイアスへの理解と適切な対応が求められます。

研修だけでなく、評価プロセスへの介入、報告義務化、またハラスメントの兆候が見られた際の対応責任をマネージャーに明確にすることで、 現場任せにせず、組織としての対応力が高まります。

6. 外部窓口・第三者相談機関の設置

社内に相談しづらい、または組織内にバイアスが根強く存在する場合は、外部の第三者相談窓口や専門家による支援を導入するのもひとつの手段です。 客観的な立場での意見・支援が得られることで、問題の早期発見や解決が期待できます。

7. バイアスの“見える化”を進める

自分がどんなバイアスを持っているかを客観的に知るツール(例:ハーバード大学のIAT=潜在連想テストなど)を活用することで、社員一人ひとりの気づきを促すことができます。 また、組織全体の傾向をデータとして把握すれば、優先的に改善すべき領域も明確になります。

アンコンシャスバイアスを抑えるには、「気づく→見直す→改善する」という継続的な取り組みが必要です。 一人ひとりの意識を高め、制度と仕組みで支えることで、ハラスメントの起きにくい健全な職場環境を築いていきましょう。

まとめ:無意識の偏見が「指導」を「攻撃」に変える

アンコンシャスバイアスは、誰にでも存在するものです。しかし、それに気づかずに行動すると、意図せずして他人を傷つけ、パワハラの加害者になってしまう可能性があります。

自己認識を深めること、組織として学び合うこと、それが「見えない偏見」から職場を守る第一歩です。あなたの意識一つで、周囲との関係が大きく変わるかもしれません。

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