Column –
【パワハラ加害者・パワハラ行為者への対応方法の豆知識】
パワハラ行為者の再発を防ぐために必要な研修設計|実践的アプローチ
パワハラ行為者の再発を防ぐための実践的な研修設計を解説。意図と影響の分離、認知修正、行動計画、組織構造の見直しまで体系的に紹介。厚労省の定義や心理学的根拠を踏まえ、再発リスクを下げる具体策が分かります。

パワハラ再発防止研修が機能しない理由
形式的な研修で終わっている
パワーハラスメント(職場における優越的な関係を背景とした言動により、業務上必要かつ相当な範囲を超え、就業環境を害する行為)は、厚生労働省の定義にも示されている通り、単なる感情的衝突ではなく、構造的問題を含みます。
しかし現実には、再発防止研修が「注意喚起」「法律説明」「誓約書提出」にとどまり、行動変容(行為の具体的な変化)に至らないケースが少なくありません。
意図と影響の分離が理解されていない
多くの行為者は「悪気はなかった」「指導のつもりだった」と述べます。ここで重要なのは、意図ではなく影響という観点です。心理学ではこれを「認知のズレ」と呼ぶことがあります。
- 自分の認識(正当な指導)
- 相手の受け止め(威圧・人格否定)
この差を理解しないまま研修を終えると、再発確率は下がりません。
組織側の構造問題が未解決
行為者個人の問題に矮小化すると、再発防止は困難です。情報共有不足、役割曖昧、過重労働、評価制度の不整合などが背景に存在する場合、構造改善なしに個人研修のみ実施しても効果は限定的です。
再発防止設計は「個人×構造」の両輪が必要です。
再発防止に必要な基本設計の全体像
① 事実整理フェーズ
まず必要なのは、出来事の事実と受け止めを分けて整理することです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 客観的事実 | 発言内容、状況、関係性 |
| 受け止め | 恐怖・萎縮・不安など |
| 組織背景 | 業務逼迫、役割不明確など |
② 認知修正フェーズ
認知行動療法(思考のクセを修正する心理療法)の考え方を活用し、行為者の思考パターンを可視化します。
- 「結果が出ない=努力不足だ」
- 「強く言わなければ伝わらない」
- 「上司は厳しくあるべき」
これらを分解し、合理的思考へ再構築します。
③ 行動設計フェーズ
抽象論ではなく、具体行動に落とします。
- 指導前に事実確認を行う
- 決定・保留・差戻しを明確に分類する
- 感情が高まったら3秒停止する
④ 組織連動フェーズ
人事部や上司との定期的な進捗共有を設計します。孤立させると内省が進みにくくなります。
行為者の心理・認知特性の理解
ストレスと前頭前野機能
脳科学では、強いストレス下では前頭前野(理性的判断を担う部位)の働きが低下するとされています。これにより衝動的発言が起きやすくなります。
自己正当化バイアス
人は自分の行為を合理化する傾向があります。これを「自己正当化」と呼びます。研修では防御を弱める対話設計が重要です。
共感力の段階差
共感は性格ではなくスキルです。段階的に育成可能です。
- 認知的共感(相手の立場を理解)
- 情動的共感(感情に共鳴)
- 行動的共感(配慮ある行動)
効果的な研修プログラムの具体構成
ステップ1:個別面談(90分×複数回)
公開研修よりも個別対話が効果的です。信頼関係を築きながら内省を促します。
ステップ2:ケーススタディ分析
実際の事案を分解し、「どの瞬間で選択肢があったか」を検証します。
ステップ3:ロールプレイ
安全な環境で再現し、別の言い方を練習します。
ステップ4:行動計画書作成
1週間・30日・90日の行動目標を設定します。
| 期間 | 内容 |
|---|---|
| 1週間 | 毎日の振り返り記録 |
| 30日 | 部下との定期面談実施 |
| 90日 | 第三者評価確認 |
評価・フォローアップ設計
行動評価指標
- 声量・口調の変化
- 決定プロセスの明確化
- 部下アンケート
再発兆候の早期察知
以下の兆候が出た場合、早期介入します。
- 業務逼迫の増大
- 相談減少
- 報告遅延
組織構造とマネジメント改善の同時実施
役割の明確化
経験値依存の役割分担は曖昧さを生みます。明文化が必要です。
意思決定の3分類徹底
決定・保留・差戻しを明示することで、ボトルネック(滞留)を防ぎます。
心理的安全性の確保
Googleの調査でも心理的安全性は成果に影響するとされています。
よくある失敗と回避策
短期完結型にしてしまう
単発では定着しません。最低でも複数回設計が望ましいです。
人格否定に走る
行為と人格を分けることが重要です。
被害者への配慮不足
再発防止と同時にケア設計も必要です。
まとめ|再発防止を成功させるために
- 意図ではなく影響で整理する
- 認知修正と行動設計を行う
- 組織構造と同時に改善する
- フォローアップを必ず設計する
今すぐできること:
- 行為事実と受け止めを分けて書き出す
- 決定・保留・差戻しを明文化する
- 第三者面談の仕組みを作る
FAQ
Q1. 何回の研修が必要ですか?
個人差はありますが、複数回の継続設計が望ましいです。
Q2. 行為者が否認している場合は?
防御を弱める対話設計が必要です。即断的な指摘は逆効果となる場合があります。
Q3. 集合研修だけで足りますか?
再発防止には個別支援が有効です。
Q4. 被害者ケアは必要ですか?
はい。組織信頼回復のためにも重要です。
参考・情報源
- 職場におけるパワーハラスメント対策について|厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000122897.html
- 心理的安全性とは何か|re:Work(Google) https://rework.withgoogle.com/jp/guides/understanding-team-effectiveness/
- 認知行動療法の基礎|日本認知療法・認知行動療法学会 https://www.jabct.jp/
