Column – 69
パワハラ加害者・パワハラ行為者への対応方法の豆知識
~パワハラを受けた人からパワハラ相談があった時の対応方法の注意点~

2020年にパワハラ防止法が施行されて以来、パワーハラスメント(以下、パワハラ)の問題が表面化されやすくなりました。パワハラと思われる言動を受けた人がパワハラ相談窓口や人事労務担当者へ相談した後の対応が非常に重要になります。今回は、「パワハラを受けた人からパワハラ相談があった時の対応方法の注意点」について考えてまいります。
【目次】
1. パワハラ相談窓口・パワハラ担当人事労務担当者とは
■ パワハラ相談窓口・パワハラ担当人事労務担当者とは
2020年6月に大企業、2022年4月に中小企業も含めた全ての組織が対象となり施行されたパワハラ防止法では、事業主は働く人からの相談に対し、適切かつ柔軟に対応するために必要な体制の整備を義務付けました。この義務とは、パワハラ被害者が相談できる場所である相談窓口の設置です。
この相談窓口は、会社内に設置し、人事労務を管轄する部署の人たちが対応する場合と弁護士事務所や社会保険労務士事務所などの外部に委託する場合、またはセクハラやマタハラ相談窓口と一体化して設置される場合もあります。
パワハラ被害者相談窓口を設置する目的は、働く全ての人たちがパワハラと思われる言動を受けた時に相談しやすい状況を整備し、パワハラの早期発見とパワハラ問題への対応を促すことです。また、パワハラ被害を受けた人が安心して相談できる相談窓口の運用をするためには、パワハラ被害者のプライバシー保護と、相談することによって不利益な扱いを受けないことを周知徹底することが大切です。
ただし、組織がどんなに完璧なパワハラ相談窓口を準備しても、パワハラ被害者が容易く相談ができるわけではありません。
では、次に、「パワハラと思われる言動を受けた人が相談を決意するまで」について見ていきましょう。
2. パワハラと思われる言動を受けた人が相談を決意するまで
■ パワハラと思われる言動を受けた人が相談を決意するまで
パワハラと思われる言動を受ける全ての人が、パワハラだと感じるわけではありません。それは、それまでに構築された人間関係や受け手側の捉え方、また被害を受けている人にも問題がある場合など、それ相応な理由があるからです。しかし、どのような理由があれ、身体的な攻撃、人前で大きな声で怒られるなどの精神的な攻撃を受けた場合、何かしら心身への影響があると考えられます。
では、パワハラに該当するような言動を受けて、社内外のパワハラ相談窓口に相談することを決意するまでに、どれくらいの時間が費やされるのでしょうか。これは人によって異なりますが、多くの人が「本当にこんなこと相談してもいいのだろうか」「こんなことを相談すると仕事を辞めさせられるのではないか」「パワハラ加害者・パワハラ行為者から報復行為があるのではないか」など、相談することで起こり得るリスクを想定し、長い間ひとりで悶々と悩みます。
一方、パワハラ加害者・パワハラ行為者は、自らの言動で誰かを傷付けていることを知る由もないことから、パワハラに該当する言動は継続して行われ、パワハラ被害者は更に傷つきます。我慢すること暫くすると、パワハラ被害者の心身に深刻な症状が出始めます。例えば、不眠になったり、食欲がなくなったり、お風呂に入らなくなったりすることで、周囲の人たちも様子がおかしいことに気が付き始めます。このような状態でもパワハラ被害者はなんとかして仕事を続けますが、ある日我慢の限界を迎える時が来ます。
そして、ようやく決意します。「パワハラ相談窓口に相談しよう」と。
パワハラ被害者以外の人たちは、「なんでもっと早く相談しなかったのか」と疑問に感じる人もいるかもしれませんが、人間は自分の身に危険が迫っている時に、自分の身を守るために「あえて動かない」という選択をする本能を持って生まれてきています。「相談しない=何も問題がない」ということもあれば、「相談しない=相談できない」ということもあることを私たちは理解する必要があります。
このような経緯を経て、パワハラ被害者は、自分が相談しやすい方法で相談することになります。では、最後に、「パワハラを受けた人からパワハラ相談があった時の対応方法の注意点」について考えていきましょう。
3. パワハラ相談があった時の対応方法の注意点
■ パワハラ相談があった時の対応方法の注意点
ケースバイケースですが、パワハラに該当する言動を受けた人の多くが長い間ひとりで悩み、意を決してパワハラ相談窓口へ連絡をしてきます。その時の心境は人により異なりますが、不安や悲しみ、また怒りなど何かしらのネガティブな感情を抱いていることには変わりありません。この時に、パワハラ相談窓口の相談員の対応次第で、相談内容の行く末が望ましい方向に進むのか、否かを左右すると言っても過言ではありません。
では、先ず、パワハラ相談窓口の相談員の役割について考えてみましょう。
パワハラ相談窓口の相談員の役割には、相談者の「相談」に応じ、必要な助言・指導を行うことがあります。対応が必要な場合は、相談者の意向を尊重しながら対応を行い、相談者のフォローを行います。
多くの相談者はさまざまな不安を抱えながら、相談員に相談をしてきます。自分がパワハラに該当すると思われる行為を受けた場合や職場でパワハラがあった場合には、相談者自身が強いストレスを感じていることが多くあります。パワハラ相談窓口の相談員は、相談者の立場に立って、相談者の話に真摯に耳を傾け、相談者の気持ちを理解したうえで内容を受けとめるといった基本を忘れないことが大切です。
では、パワハラ相談窓口の相談員は、パワハラ被害者からの相談に対し、どのようなことに気を付ければいいのでしょうか。パワハラ相談があった時の対応方法の注意点は以下の通りです。
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相談者との信頼関係の構築(相談者の立場に立って考える)
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相談者の保護と守秘義務を厳守する
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匿名の場合にも対応を行う
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相談者の話を傾聴する
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必要な項目についてヒアリングする
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相談内容の要約・確認をする
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相談者の要望を確認
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情報の取扱いに留意する
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回避策等の助言
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ハラスメント相談とカウンセリングの相違点
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セクハラ相談とパワハラ相談の違い
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迅速に対応する
以上が、パワハラ相談があった時の対応方法の注意点になります。この中で特に注意したいのが、「ハラスメント相談とカウンセリングの相違点」、「セクハラ相談とパワハラ相談の違い」になりますので、詳しくみていきましょう。
まず、「ハラスメント相談とカウンセリングの相違点」ですが、カウンセリングでは、あいづち等は欠かせない技法ですが、パワハラの相談においては、あいづち、肯定的な発言はもちろん必要ですが過剰になりすぎると、相談者は自分の言っていることが正しく、相談員が認めてくれたと思いこみ、思わぬトラブルが生じることになりかねないので注意が必要です。共感と中立を大切にしましょう。
特に「パワハラですよね」と同意を求められたり、「どう思いますか」と意見を求められたりした場合は、「個人的な意見を述べる立場ではないので」と柔らかな言葉で伝えるようにしてください。
次に、「セクハラ相談とパワハラ相談の違い」については、以下の通りです。
セクハラの相談の場合は、相談員が「恋愛感情や相手との関係性」に踏み込みすぎると、相談者が嫌な思いをすることもあります。相談者が何に悩んでいるのか自分から話ができるようにしていきましょう。相当な勇気を持って話をしにくる場合が多いため、あたたかな雰囲気で、相談してくれたことを労います。また、自分を責めている人も多い傾向がありますので責めなくてよいことも伝えてください。
パワハラの相談の場合は、仕事上の問題であることが多いため、共感姿勢は保ちつつも、中立的に話を聴くことがポイントです。気をつけたいことは、「上司はこのような思いじゃないのかなあ」と勝手に相手の評価をしたり、「とりあえずコミュニケーションをとりましょう」といったり安易な助言は避けましょう。どうにもならない葛藤を受け止め、どうしたらよいかを一緒に考える姿勢で対応することが大切です。
以上が、パワハラ相談があった時の対応方法の注意点ですが、特に組織内の人事労務担当者がパワハラ相談窓口の対応をするときは、日常の業務に追われる中、ふいに相談があると業務を中断されて面倒に思ったり、焦ってしまったりとどうしても「相談者の立場に立って考える」ことを忘れてしまいがちです。そのため、毎回相談に乗る前に「相談者の立場にたって対応をする」ことを意識して心がけるようにしてください。
4. まとめ
■ まとめ
今回は、「パワハラを受けた人からパワハラ相談があった時の対応方法の注意点」について学んできました。パワハラは最悪のケースでは人の命をも奪う、決して許される行為ではありません。言葉や態度の凶器であるパワハラを受けた人は既に傷つき、悩んだ末に勇気を持って相談しにきます。
このような相談者に対して、パワハラ相談員は、リラックスした穏やかで、友好的な声のトーンや話し方で対応することが、相談者が安心して話せるような信頼関係を構築するための第一歩です。先述した通り、パワハラ相談者は傷ついている人であることを理解して、穏やかにゆっくりとしたペースで進めていくことが大切です。相談者の話が不自然であったり、理解しがたい内容であったりしても、その場で追及したり批判したりせずに、「この人にしてみればそのように感じるのだ」と受け止めることができるようパワハラ相談員も意識を高めるための継続した取り組みが重要になります。
最後に
パワーハラスメント(パワハラ)対策でお困りの企業様は、一般社団法人パワーハラスメント防止協会までご連絡ください。パワハラ加害者/パワハラ行為者更生カウンセリング研修、パワハラ防止研修をはじめ、パワハラを防止するための各種サービスをご提供しております。日本全国の皆さまからのご連絡をお待ちしております。

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