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【パワハラ加害者・パワハラ行為者への対応方法の豆知識】
パワハラ行為者が懲戒処分に不服を申し立てた時の対応ガイド
パワハラ行為者が懲戒処分に不服を申し立てた場合の企業対応を、法的観点と実務フローから解説。初動対応、再調査の判断基準、懲戒の妥当性、紛争化を防ぐポイントまで人事担当者向けに詳しく整理します。

パワーハラスメント(以下、パワハラ)に関する懲戒処分に対して、当該行為者が不服を申し立てる場面は珍しくありません。企業・団体の人事・総務・コンプライアンス担当者にとって、この局面での対応は、法的リスク・組織の信頼・再発防止のすべてに影響します。本記事では、疑問に正確に答えるため、実務で使える判断軸と具体策を体系的に整理します。
不服申立てが起きる理由と企業リスク
行為者が不服を申し立てる主な理由
- 事実認定への不満(発言の文脈が切り取られたと感じる)
- 処分の重さへの不均衡感(過去事例との比較)
- 調査手続への不信(ヒアリングが不十分だという認識)
企業側が直面するリスク
不服申立てを軽視すると、懲戒権濫用(懲戒権の行使が社会通念上相当性を欠くこと)として無効と判断される可能性があります。加えて、内部統制の弱さが外部に露呈し、企業ブランドや採用にも影響します。
初動対応の基本原則
感情ではなく手続で応じる
不服申立てを「反抗」と捉えず、正式な社内手続として受理します。感情的な応酬は紛争を拡大させます。
記録の保全と整理
調査報告書、ヒアリングメモ、証拠資料(メール・チャット等)を時系列で整理します。後日の説明責任に耐える状態が重要です。
調査・判断プロセスの再点検
再調査の要否判断
新証拠や手続的瑕疵(かし)が示された場合は、限定的な再調査を検討します。一方、単なる主張の繰り返しであれば、既存判断の合理性を丁寧に説明します。
第三者性の確保
社内委員会に利害関係者が含まれていないかを確認します。必要に応じて外部有識者の意見を参考にします。
懲戒処分の妥当性を支える要件
就業規則との整合
懲戒事由・種類・手続が就業規則に明確に定められていることが前提です。曖昧な規定は不利に働きます。
相当性(バランス)の判断
| 評価軸 | 確認ポイント |
|---|---|
| 行為の悪質性 | 反復性、立場の利用、被害の深刻度 |
| 結果の重大性 | 被害者の就業継続への影響 |
| 過去の取扱い | 同種事案との均衡 |
不服申立てへの実務対応パターン
処分維持の場合
判断理由を文書で説明します。感情的評価ではなく、事実・規程・判断基準を明確にします。
処分変更の場合
新事実や手続的不備が認められた場合は、処分を変更します。変更理由を記録に残すことで、一貫性を担保します。
教育的措置の併用
懲戒と並行して、再発防止研修や個別面談(行動改善を目的とした支援)を実施すると、紛争の沈静化につながる場合があります。
外部対応への備え
労働基準監督署への説明
手続の適正性と是正措置を整理し、簡潔に説明できる資料を準備します。
紛争化を見据えた対応
訴訟・労働審判を想定し、証拠の網羅性と説明の一貫性を確保します。早期解決を目指す場合も、安易な譲歩は避けます。
再発防止と組織改善につなげる方法
制度の見直し
通報・調査・懲戒の各フローを可視化し、従業員に周知します。
管理職教育の強化
指導とハラスメントの線引きを具体例で示す研修は、再発防止に有効です。
まとめ:主要学びと次のアクション
- 不服申立ては手続で受け止め、感情で対応しない
- 事実認定・相当性・規程整合の三点を再確認
- 説明責任に耐える記録整備が最大の防御
- 懲戒と支援を組み合わせ、再発防止につなげる
FAQ
不服申立てがあった場合、必ず再調査が必要ですか?
新証拠や手続的問題が示された場合に限り、限定的な再調査を検討します。
処分理由はどこまで開示すべきですか?
個人情報に配慮しつつ、判断の根拠が理解できる範囲で説明します。
謝罪や減給の見直しは有効ですか?
事案の性質によります。安易な見直しは不公平感を生むため注意が必要です。
外部弁護士への相談は必須ですか?
高リスク事案や紛争化が見込まれる場合は、早期相談が有効です。
参考・情報源
- 厚生労働省「職場におけるパワーハラスメントの防止」https://www.mhlw.go.jp/
- 日本労働弁護団「懲戒処分の基礎知識」https://roudou-bengodan.org/
- 労働政策研究・研修機構「ハラスメントと企業対応」https://www.jil.go.jp/
