パワハラ加害者とパワハラ行為者の違いを徹底解説

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【パワハラ加害者・パワハラ行為者への対応方法の豆知識】
パワハラ加害者とパワハラ行為者の違いを徹底解説

パワハラ加害者と行為者の違いを徹底解説。定義や法律上の責任、企業が負うリスクと防止策まで専門的にわかりやすく説明します。

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目次

 

パワハラの定義と基本理解

パワーハラスメントとは

パワーハラスメント(以下パワハラ)は、職場において優位な立場にある者が、その権限や立場を背景に、相手に精神的・身体的苦痛を与える行為を指します。厚生労働省によれば、典型的なパワハラは「優越的な関係を背景にした言動」「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」「労働者の就業環境を害するもの」と整理されています。

「行為」と「責任」の二重構造

パワハラは単なる「行為」として表れる一方で、その行為を行った者の「責任」として法的・組織的に位置付けられます。この二重構造を正しく理解することが、加害者と行為者を区別する際の出発点となります。

 

加害者と行為者の違いとは

パワハラ行為者の定義

パワハラ行為者とは、実際に職場で不適切な言動を行った人物を指します。たとえば「部下に対して過度な叱責を繰り返した上司」や「業務と関係のない私的な用件を強要した先輩社員」などが該当します。行為者の範囲は、管理職に限らず、同僚や部下でも成立します。

パワハラ加害者の定義

一方でパワハラ加害者とは、被害を与えた責任を法的・社会的に問われる主体を指します。行為者その人が加害者となる場合もあれば、組織や使用者(会社)も加害者として認定されることがあります。特に裁判例では「会社が適切な防止措置を講じなかった場合、使用者責任を負う」とされるケースが多く報告されています。

両者の関係性を整理

区分 パワハラ行為者 パワハラ加害者
意味 不適切な言動を行った当事者 被害を与え責任を問われる主体
範囲 上司・同僚・部下など 行為者本人+会社(使用者)
責任 懲戒処分・人事措置 損害賠償責任・法的責任

 

労働施策総合推進法の規定

労働施策総合推進法では、企業に対してパワハラ防止措置を講じる義務が課されています。この法律上の枠組みから見ると、行為者が不適切な言動を行ったとしても、企業が十分な防止措置を取っていなければ、会社自体が加害者として法的責任を負うことになります。

裁判例における判断

判例では「行為者個人の責任」と「使用者責任」が併存するケースが一般的です。たとえば、上司の過度な叱責で部下が精神疾患を発症した場合、行為者個人は不法行為責任を問われ、会社も安全配慮義務違反として損害賠償を命じられる可能性があります。

懲戒と法的責任の違い

行為者は懲戒処分(減給・降格・解雇など)を受ける一方で、加害者としての企業は法的責任(慰謝料や損害賠償)を負います。ここに「行為者」と「加害者」の実務的な違いが明確に表れます。

 

組織における責任とリスク

企業が負うリスク

パワハラが発生した場合、企業は社会的信用の失墜、労働基準監督署からの指導、訴訟リスクなど多大な影響を受けます。特に企業が「加害者」とみなされることは、ブランド価値や採用活動にも直結する深刻な問題です。

管理職の責務

管理職は行為者としてのリスクに加え、部下の行為を見過ごすことで間接的に加害者としての責任を問われる可能性もあります。そのため「注意義務」「監督義務」を果たすことが極めて重要です。

組織文化の影響

パワハラは個人の資質だけでなく、組織文化に根差して発生します。「結果を出せば手段は問わない」といった価値観が横行している企業では、行為者が生まれやすく、結果として企業が加害者とされるリスクが高まります。

 

具体的なケーススタディ

ケース1:上司による過度な叱責

上司が会議の場で部下を繰り返し罵倒した結果、部下が休職したケース。この場合、上司は行為者であると同時に加害者でもありますが、企業が適切な防止措置を講じていなければ、会社も加害者として責任を負います。

ケース2:同僚間のいじめ

同僚が特定の社員を孤立させ、業務に支障を与えたケース。行為者は同僚ですが、会社が「いじめを把握しながら放置した」と評価されれば、企業が加害者となります。

ケース3:部下による上司への嫌がらせ

部下が上司に対して誹謗中傷を繰り返した場合も、行為者は部下ですが、企業が組織として対応しなければ、やはり加害者としての責任を負います。

 

防止のためにできること

企業が行うべき防止措置

  • パワハラ防止規程の策定と周知
  • 相談窓口の設置と迅速な対応
  • 研修・啓発活動の継続的実施
  • 被害者へのケア体制の整備

個人が意識すべき行動

  • 日常的に冷静な言葉遣いを心掛ける
  • 感情的な指導を避け、事実ベースで伝える
  • 相手の立場を尊重する
  • 困ったときは早めに相談する

組織文化の醸成

パワハラを防止するためには、「心理的安全性の高い職場づくり」が重要です。組織のトップが率先して「不適切な言動は許さない」という姿勢を示し、健全なコミュニケーションを奨励することが効果的です。

 

よくある質問(FAQ)

Q1. パワハラ行為者と加害者は必ず同じ人ですか?

必ずしも同じではありません。行為者は言動を行った人物を指し、加害者は責任を問われる主体を指します。行為者と加害者が一致する場合もあれば、会社も加害者となる場合があります。

Q2. 会社が加害者とされるのはどのような場合ですか?

会社がパワハラを把握しながら適切な防止・対応措置を講じなかった場合、安全配慮義務違反として加害者とされることがあります。

Q3. 行為者が部下の場合でも会社は責任を負いますか?

はい。行為者が部下であっても、企業が十分な対応を怠れば、会社が加害者とされることがあります。

Q4. パワハラを受けた場合、どうすればよいですか?

まずは社内の相談窓口や上司に報告し、それでも改善しない場合は労働局や労働基準監督署など外部機関に相談することが推奨されます。

 

まとめと次のアクション

  • 「行為者」は不適切な言動を行った人物を指し、「加害者」は責任を問われる主体を指す。
  • 加害者には行為者本人だけでなく、企業や組織も含まれる。
  • 企業は防止措置を怠ると法的責任を負うリスクがある。
  • 日常のコミュニケーション改善や相談体制整備が防止の鍵となる。
  • 読者が今できること:自分の職場の相談窓口を確認し、パワハラ防止のための行動を一つ実践する。

 

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参考・情報源

  • 厚生労働省「職場におけるハラスメント防止のために」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188010.html
  • 東京労働局「ハラスメント対策」 https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku
  • 独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT) https://www.jil.go.jp/
  • 裁判例情報(裁判所公式) https://www.courts.go.jp/

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