Column – 89
【パワハラ防止研修お役立ちマニュアル】
管理職が学ぶパワハラ防止研修:指導とパワハラの違いを正しく理解する

職場で「パワハラ(パワーハラスメント)」という言葉を耳にしない日はありません。企業が法令遵守や働きやすい環境づくりに力を入れる中で、管理職向けのパワハラ防止研修の重要性は日に日に高まっています。しかし一方で、「適切な指導」と「パワハラ」の違いが分からず、部下への声かけや評価、注意に自信を持てない管理職も少なくありません。
本記事では、パワハラ防止研修の中で必ず押さえておきたい「指導」と「パワハラ」の違いを、具体例を交えて解説します。
パワハラとは何か?

パワハラは、主に職場における優越的な関係を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える行為や職場環境を悪化させる行為を指します。厚生労働省はパワハラの要件を以下の三つに整理しています。
- 職場での優越的な関係を背景とした言動であること
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えていること
- 労働者の就業環境が害されること
これらすべてを満たした場合、パワハラと認定されます。
適切な指導とは何か?

管理職には部下の成長を促し、業務を円滑に進めるための「指導」が求められます。適切な指導は、業務遂行上必要な注意や助言、評価のフィードバックなどが含まれます。ここで重要なのは、部下の人格や尊厳を傷つけず、公平・公正な立場で行われることです。 具体的には、以下が例として挙げられます。
- 部下がミスをした際に、どこが問題だったのか具体的に説明し、再発防止のためのアドバイスを行う
- 業務改善のために目標を設定し、進捗を一緒に振り返る
- 努力を認め、成果につなげるための建設的なフィードバックを行う
指導とパワハラの違いはどこにある?

指導とパワハラの違いは、「目的」「方法」「内容」「頻度」「場所」など、いくつかのポイントで区別できます。
1. 目的の違い
指導: 部下の成長や業務の質向上を目的としています。本人が改善しやすいように配慮しつつ、前向きな支援を意図しています。
パワハラ: 感情的な怒りの発散、相手の人格否定、業務とは無関係な圧力や制裁を目的としている場合が多いです。
2. 方法・態度の違い
指導: 冷静で論理的、具体的な事実や根拠に基づいて説明し、必要があれば改善策を一緒に考えます。
パワハラ: 大声で怒鳴りつけたり、侮辱的な言葉を使ったり、無視や排除を行うなど、感情的で一方的な言動が目立ちます。
3. 内容の違い
指導: 業務上のミスや改善点、評価に関することなど、業務遂行に必要な内容に限られます。
パワハラ: 業務とは直接関係ない私生活への言及や、人格を否定するような内容が含まれます。
4. 頻度・場所の違い
指導: 必要なタイミングにおいてのみ、適切な場所(ミーティングルームなど)で行います。
パワハラ: 繰り返し行われたり、人前でさらし者にするような言動が含まれる場合があります。
具体例で考える指導とパワハラ

- 指導の例:「今回の資料に一部ミスがあったので、次回からはダブルチェックをお願いします。分からないことがあれば、いつでも相談してください。」
- パワハラの例:「こんな簡単なこともできないのか?君は仕事に向いていないんじゃないか?」と人前で大声で叱責する。
同じ「注意・指摘」でも、部下を尊重し建設的なアドバイスをするのが指導、人格否定や精神的苦痛を与えるものはパワハラとなります。
まとめ:管理職に求められる姿勢

管理職は、部下を成長させ、組織を活性化させるための「適切な指導」を行うと同時に、パワハラを未然に防ぐ役割も担っています。そのためには、指導の際には以下のポイントを意識しましょう。
- 事実に基づき、冷静かつ具体的に伝える
- 相手の人格や尊厳を傷つけない
- 前向きな改善のためのアドバイスを心がける
- 必要なタイミングと場所で行う
- 一方的な押し付けや感情的な言動を避ける
パワハラ防止研修は、管理職自身の成長だけでなく、働きやすい職場環境づくりにもつながります。指導とパワハラの違いを正しく理解し、職場に信頼と協力の輪を広げていきましょう。