Column – 76
【パワハラ加害者・パワハラ行為者への対応方法の豆知識】
部下のパワハラ(逆パワハラ)を見逃さない!管理職向け対応と予防策

部下から上司へ向けられる、いわゆる「逆パワハラ」は、放置すると組織の信頼関係を破壊し、職場全体に悪影響を及ぼします。近年では部下の側からの精神的圧力や無視といった行動が問題視されるケースも増えています。
本記事では、管理職が早期に発見し対応するための知識と、職場を健全に保つ予防策を分かりやすく整理しました。
部下からのパワハラ(逆パワハラ)とは何か

一般的に「パワハラ」と聞くと、上司から部下への圧力や暴言などを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、近年注目されているのが、立場は部下でも、言動や影響力によって上司に精神的苦痛を与える「逆パワハラ(部下によるパワハラ)」です。
逆パワハラとは、職位や雇用形態にかかわらず、部下が上司に対して嫌がらせ・圧力・誹謗中傷などを行い、上司の就業環境を悪化させる行為を指します。これはパワハラの定義のうち、「優越的な関係」を一見満たしていないように見えますが、実際には「発言力」や「同調圧力」「集団の力」などを背景に、実質的な“優位性”が生じているケースが少なくありません。
よくある逆パワハラの具体例
- 業務指示を無視し、意図的に報告や相談を行わない
- 上司の人格や容姿に関する中傷を、社内外に拡散する(SNS含む)
- 複数の部下が結託し、上司を孤立させる
- 「パワハラだ」と逆に訴えることで上司にプレッシャーをかける
- 直属の部下が上司の評判を貶めるような噂を流す
これらの行為は、上司の指導意欲を奪い、業務の遂行に支障をきたす原因になります。特に、役職は上司であっても、部下が専門性や技術力を持っていて業務上欠かせない存在だった場合、上司が“言い返せない”“指導しづらい”という力関係が生まれやすくなります。
逆パワハラが見逃されやすい理由
- 表面化しにくい:多くの場合、攻撃的ではなく「無視」「受け流し」などの受動的な形で行われる
- 上司が声を上げにくい:「自分が弱いと見られたくない」「管理能力の問題と捉えられるのが怖い」などの心理的抑制
- 組織内のバイアス:パワハラ=上司→部下という先入観により、対応が遅れやすい
逆パワハラが見過ごされたままになると、管理職本人のメンタル不調だけでなく、職場全体の士気低下・組織の機能不全を招くリスクがあります。上司が委縮し、マネジメントが機能しなくなることで、業務が滞ったり、他の部下に不公平感を生むこともあります。
判断に必要な3つの要素
逆パワハラかどうかを判断する際には、以下の3要素を軸にすることが大切です。
要素 | 内容 | 例 |
---|---|---|
① 実質的な優位性 | 発言力・人数・専門性などで相手に対して優位な立場 | ベテラン社員が新人上司を侮り無視する |
② 言動の不当性 | 業務上の正当性を欠いた嫌がらせ・誹謗中傷 | グループLINEで上司の悪口を共有 |
③ 環境への悪影響 | 精神的負担や業務妨害が継続的に生じる | 上司が孤立し、業務連携が断絶する |
これらをもとに、個別の状況に応じた判断と、事実に基づく冷静な対応が必要です。見落とさず、勇気を持って向き合う姿勢が、管理職としての真のリーダーシップにつながります。
兆候に気づく:見逃しやすいSOSサインと行動変化

部下からの問題行動は明確な形で出ることもありますが、多くは以下のようなサインとして出現します。
カテゴリ | 具体的な変化 |
---|---|
行動・態度 | 指示無視、報告拒否、集団での非協力的態度 |
言動 | 上司に対する公然の暴言、中傷、SNSでの誹謗コメント |
人間関係 | 特定の上司を避ける、孤立させる、仲間が巻き込まれる |
業務への影響 | プロジェクト進行遅延、メンバー離脱、チーム崩壊の兆し |
特に、元気だった部下が急に沈黙したり、一定の上司への連絡だけを拒否するような状況は要注意。こうした「静かな反発」は見逃されがちですが、早期対応が鍵となります。
管理職が取るべき初動対応とプロセス

逆パワハラが疑われる事例では、まず冷静な事実確認と中立的な対応が求められます。以下のステップを参考にしてください。
- 記録の保存:日時・場所・言動内容・目撃者を詳細に記録。
- 複数の関係者から聴取:被害と思われる部下だけでなく周辺社員からも情報収集。
- 相談窓口への連携:社内相談体制、人事や専門部署と連携し対応策を検討。
- 本人と部下双方への面談:感情ではなく事実と影響を丁寧に伝え、改善を促す。
- 必要に応じた処分判断とフォロー:懲戒や配置替えなども検討し、再発防止策を実施。
特に注意したいのは、感情的な判断を避け「客観性」を保つこと。外部専門家や人事による支援を受けることが有効なケースもあります。
予防策として管理職が取るべき日常的取り組み

パワハラを未然に防ぐには、場当たり的な対応ではなく、組織として平時からの仕組みづくりが不可欠です。
- 定期的な1on1ミーティング:部下の小さな不安や不満を早期にキャッチできる環境づくり。
- 健全な職場文化の醸成:「ハラスメントは許さない」という明文化された方針と周知。
- 相談窓口の活性化:管理職も相談しやすい環境整備と、相談後のフォロー強化。
- 全体研修と共通理解の促進:部下を含む全社員に対してハラスメントの理解を深める教育。
- 受け取る力を育む部下教育:部下にも「期待」と「圧」の違いを理解し、誤解を防ぐ力を養う。
管理職自身だけでなく、部下の視点にも目を配ることで、双方の認識ギャップを縮め、健全な関係を維持することが可能になります。
まとめ
部下によるパワハラ(逆パワハラ)は、組織の誰にでも起こりうる問題です。管理職が兆候に気づき、冷静かつ適切に対応することが職場の安全性を守ります。
さらに、日常的なコミュニケーションや相談体制の整備を通じて、未然に防ぐ文化を根付かせることが重要です。管理職としての責任と実務的な視点を両立させつつ、信頼関係を再構築し、職場全体を健全に保つための行動をぜひ起こしてください。
FAQ
Q1: 部下による発言がハラスメントかどうか迷ったらどうすればよい?
A1: 記録を残し、複数者の視点から情報を収集し、公平な立場から判断するために相談窓口や人事の支援を利用しましょう。
Q2: 部下の小さな違和感をどうやって見つける?
A2: 定期的な1on1や気軽な面談を通じて、普段と異なる言動や態度を早期に察知できる体制を整えておくことが大切です。
Q3: 部下教育はどのように取り入れるとよい?
A3: 若手研修や全社員研修で「受け取る力」や「ハラスメントの境界」を学ぶ機会を設けることで、誤解による対立を未然に防げます。