被害者からのパワハラ加害者の通報が虚偽だったときの対応マニュアル

Column – 75
【パワハラ加害者・パワハラ行為者への対応方法の豆知識】
被害者からのパワハラ加害者の通報が虚偽だったときの対応マニュアル

Column – 75


パワハラ被害を申し立てる通報が、後に虚偽だったと判明したとき、企業や関係者はどう対応すべきでしょうか?加害者側と通報者側、両者のケアを含めた適切な対応が求められます。

本記事では、「嘘の通報」が発覚した際に必要な手順・注意点・予防策まで詳しく整理します。

1. まず行うべき:事実確認と証拠収集の手順

虚偽通報に対応する際、初動が最も重要です。感情に流されず、冷静かつ慎重に以下のステップで事実を精査します。

  • ヒアリングの実施
    関係者(被通報者・申告者・目撃者)から個別に聴取し、通報内容との整合性を検証します。

  • 客観的証拠の収集
    メールやチャット記録、出退勤データ、会議録などを網羅的に確認します。

  • 調査委員会の設置
    社内または第三者を交えた複数名による調査組織を設け、公平性を担保します。

この工程をきちんと踏まないと、不当な処分や後の訴訟リスクが高まるため要注意です。

2. 虚偽と判明した場合の対応とリスク管理

虚偽通報と判断された時点で、組織として次の対応を進めます。

  • 申告者への聴取
    悪意があったのか、誤解だったのか、背景を詳しく確認します。

  • 処分の判断
    故意性が認められる場合、就業規則に基づく懲戒処分を検討します。ただし、通報保護規定とのバランスを取る必要があります。

  • 被通報者への補償
    名誉やキャリアに傷がついた可能性があるため、配置転換の穏当な見直しやフォロー体制を整備します。

3. 図解:虚偽通報への対応プロセス

段階 対応内容 目的
1. 通報受理 迅速に社内で通報窓口を開示 透明性を担保
2. 一次調査 ヒアリング・証拠確認 事実関係を可視化
3. 判定 虚偽・誤解・真実を区分 適切な対応ルート選定
4. その他対応 処分判断・再構築 再発防止と公平性確保
5. フォロー 両者へのカウンセリング実施 心理的安全性の回復

4. 加害者(被通報者)への対応ポイント


虚偽のパワハラ通報により「加害者」とされた社員は、大きな精神的・社会的ダメージを受ける可能性があります。そのため、虚偽と判明した後の企業側の対応には、慎重さと配慮が不可欠です。単に「誤解でした」で終わらせず、信頼回復・心理的ケア・業務環境の見直しなど、具体的かつ多角的な対応が求められます。

以下は、企業が加害者側に対して取るべき主要な対応ポイントです。

  • ① 面談と事実の共有
    調査の結果が出た時点で、本人に対して事実を丁寧に説明する必要があります。面談は複数名(人事担当者・上司など)で行い、「あなたの言動には問題がなかった」と明確に伝えることが信頼回復への第一歩です。加えて、調査経過や判断理由をなるべく透明に説明することで、本人の不安を軽減できます。
  • ② 心理的サポートとフォロー体制の構築
    通報を受けた本人は、「職場の誰が通報したのか」「なぜ自分が標的に?」といった強いストレスを抱えているケースが多く見られます。企業としては、産業医やEAP(従業員支援プログラム)を通じて、カウンセリング機会を提供するなど、心のケアを行う体制を整えることが重要です。
  • ③ 配置や業務環境の見直し
    通報者との関係がそのまま続く場合、心理的な負担が大きくなりかねません。必要に応じて部署異動や業務内容の調整を検討することで、再び安心して働ける環境をつくることができます。ただし、本人の意向やキャリアへの影響も慎重に考慮すべきです。
  • ④ 社内風評への対応と名誉回復
    虚偽通報によって噂が広まっていた場合は、個人の名誉を守るための対処も必要です。例えば、調査結果を一部公表する、関係部署へ適切な説明をするなどして、誤解や偏見が残らないように配慮しましょう。本人の希望があれば、社内広報を通じたフォローアップも検討できます。
  • ⑤ 今後のキャリア支援
    精神的ダメージを受けた後の復帰には、時間と支援が必要です。昇進・異動・目標管理など、今後のキャリア形成をどう支援するかを長期的に設計し、上司や人事と連携したサポート体制を構築しましょう。

こうした対応を丁寧に行うことで、被通報者の信頼回復を助けるだけでなく、組織全体に対しても「この会社は誤解にも真摯に対応する」という安心感を与えることができます。

加害者とされた社員を守るという姿勢は、他の社員にも「公正な判断をしてくれる会社だ」という信頼を生み、最終的には組織風土の健全化にもつながっていきます。

5. 申告者への対応と再発防止措置


  • 虚偽の原因を究明
    悪意なのか、勘違い・誤認だったのか、申告者の背景を慎重に確認します。
  • 必要に応じ懲戒処分
    故意があった場合は公正なルールに従い懲戒を検討。ただし通報保護との整合性に注意。
  • 再教育の実施
    ハラスメント理解の不足や社内制度の誤解があれば、追加研修を行うと良いでしょう。

6. 企業としての制度整備と予防策

虚偽通報を最小限に抑えるため、社内制度の見直しは必須です。

  • 通報ルールの明文化
    誰が、どんな状況で、どこに通報するかを明確にします。
  • 守秘義務と報復禁止の徹底
    通報者・被通報者双方を守る仕組みを規程化。
  • 透明かつ迅速な調査プロセス
    社内調査委員会の設置・定期的研修によって信頼性の高い運用を行います。

まとめ


虚偽通報は組織全体の信頼と風土に影響を与えかねない重大な問題です。しかし、冷静かつ正確な事実確認を通じて対応すれば、被害者として扱われた加害者のケアも可能です。両者に寄り添いつつ、公正で透明な制度を整えることが組織再建の鍵となります。

FAQ

Q. 虚偽と判断されたらすぐ懲戒していい?
A. 故意が明らかであっても慎重に。証拠と相談保護のバランスを確認した上で判断しましょう。

Q. 通報者には匿名でも構わないの?
A. 匿名制度はプライバシー保護に役立ちますが、調査が難航する可能性もあります。バランスが重要です。

Q. 再発防止には何が有効?
A. 通報窓口の明確化、定期的制度研修、社内調査体制の強化など、制度面と文化面の両輪で進めましょう。

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