Column – 80
【パワハラ防止研修お役立ちマニュアル】
パワハラ防止研修の内容とは?効果的なカリキュラムの構築法

パワーハラスメント(以下、パワハラ)防止は、今や企業にとって避けて通れない重要課題です。中小企業を含めたすべての事業所に対してパワハラ防止措置が義務化されて以降、研修の実施を検討する企業が急増しています。とはいえ、「研修の目的とは何か?」「どんな内容にすれば効果的なのか?」といった疑問も多く聞かれます。本記事では、パワハラ防止研修の目的・構成・階層別のポイント・当協会の研修内容までを詳しくご紹介します。
パワハラ防止研修の目的とは?

パワハラ防止研修の本質は、「行動の変容を促すこと」です。単に法律や定義を知るだけでは、職場での改善にはつながりません。以下に主な目的を紹介します。
1. 無自覚な加害行為を防止する
多くの加害者は「指導のつもりだった」「悪気はなかった」と考えています。こうした“無自覚”によるハラスメントを防ぐには、研修による気づきと境界線の理解が不可欠です。
2. 被害を訴えられる安心な環境を作る
研修で相談窓口や対応方針を共有することで、「相談しても大丈夫」という空気が生まれ、早期対応や再発防止につながります。
3. 適切な指導方法を身につける
厳しさと敬意のバランスを持った接し方が重要です。研修ではロールプレイや事例紹介を通して、現場で使える表現や伝え方を学びます。
4. 法的リスクを理解し、企業を守る
労働施策総合推進法や民法上の責任を学び、管理職・経営層が正しく対応できる体制づくりをサポートします。
5. 心理的安全性の高い職場をつくる
発言や相談がしやすい環境は、社員のモチベーションや生産性を高め、長期的な人材定着にも寄与します。
パワハラ防止研修の基本的な構成内容

項目 | 概要 |
---|---|
パワハラの定義と6類型 | 身体的攻撃・精神的攻撃・人間関係からの切り離しなど、具体的な6類型の違いを理解 |
実例と判例の紹介 | 実際の企業トラブルを元にした事例を使い、パワハラのリアリティを実感 |
法律と社内規定の関係 | 労働施策総合推進法と社内の就業規則との整合性を学ぶ |
コミュニケーション改善 | 上司・部下間での伝え方の工夫、指導と圧力の境界の見極め |
相談対応の基本 | 相談窓口の対応手順、記録の取り方、再発防止までの流れ |
階層別に見る研修のポイント

パワハラ研修は「誰に・何を・どのように伝えるか」によって効果が大きく変わります。組織における役割・影響力・リスクの度合いが異なるため、階層別にカリキュラムを設計することが非常に重要です。
【1】新入社員・若手層
- 学習テーマ:パワハラとは何か/自分が加害者にならないために
- 指導内容:NG行動の具体例/言われた時の対処法/相談の仕方
- 手法例:動画視聴/eラーニング+チェックテスト/若手社員向けQ&A
- 目標行動:違和感を抱いたら相談できる/自身の行動を客観視できる
【2】中堅社員・現場リーダー
- 学習テーマ:チーム内の言動管理/未然に気づく観察力
- 指導内容:指導とパワハラの境界/部下対応の注意点
- 手法例:事例ディスカッション/グループワーク/OJT事後分析
- 目標行動:適切な注意ができる/問題兆候を察知し、上に報告できる
【3】管理職
- 学習テーマ:企業の責任と法的リスク/対応ミスによる損失
- 指導内容:相談対応の原則/行動記録の必要性/迅速な事実確認
- 手法例:ケーススタディ/ロールプレイ/模擬通報への対応演習
- 目標行動:相談に誠実に対応できる/社内の相談フローを正確に理解している
【4】経営層・役員クラス
- 学習テーマ:企業価値とパワハラリスク/ガバナンスの視点
- 指導内容:社内方針の示し方/組織文化への影響力/再発防止体制の強化
- 手法例:1on1レクチャー/外部事例の共有/危機管理プランの見直し
- 目標行動:「会社としての意思」を組織全体に浸透させられる
図解:階層別の研修設計マップ
階層 | 主な研修目的 | 重点課題 | 使用ツール/形式 | 学習後に目指す状態(KPI) |
---|---|---|---|---|
新入社員・若手層 | パワハラの基礎知識を習得し、自ら加害・被害者にならない | ・ハラスメントの定義理解 ・自己点検能力の獲得 ・相談のハードルを下げる |
・eラーニング ・動画+確認テスト ・事例チェックリスト |
・受講完了率100% ・理解度テスト平均80点以上 ・相談先の認知度90%超 |
中堅社員・リーダー層 | 職場内での行動規範を示し、ハラスメント予防の実務を担う | ・指導とハラスメントの境界整理 ・部下の観察と一次対応の理解 ・チーム運営での予防意識 |
・ケーススタディ/グループ討議 ・実践ワークブック活用 ・指導チェックリスト |
・研修後アンケートで「理解した」90%以上 ・部下対応記録の記入率向上 ・早期通報件数の増加 |
管理職 | パワハラ問題への初動対応・再発防止の実務責任を担う | ・相談対応の原則と注意点 ・記録・ヒアリングの技術 ・労務リスクの正確な理解 |
・ロールプレイ/模擬相談対応 ・弁護士監修の対応マニュアル ・社内通報フロー図 |
・初動対応のミス削減 ・相談件数→報告件数の適正化 ・記録整備率90%以上 |
経営層・役員 | 組織文化を変革し、再発リスクの根絶をリードする | ・ガバナンスの視点でのパワハラ理解 ・理念と制度を接続する力 ・企業価値とコンプライアンスの両立 |
・1on1経営セッション ・外部コンサルとの戦略対話 ・講話型の啓発 |
・方針書の明文化/社内公開 ・経営メッセージの社内浸透率90% ・相談件数の年次推移による効果検証 |
活用のポイント
このような設計マップをもとに、階層ごとに目的・学習内容・手法・評価基準を揃えることで、単なる“研修実施”に終わらない、実効性ある取り組みが可能となります。
当協会では、企業文化や現場課題に合わせたカスタマイズ設計が可能です。
まとめ

階層別の研修設計は、組織全体に“共通理解”と“各自の実践目標”を浸透させるための鍵です。図解のような見える化は、社内提案や説明にも活用しやすく、上層部への説得材料としても非常に有効です。私たちは、「研修を超えた行動変容」を目指して、日本全国の職場をサポートいたします。