Column –
【パワハラ防止研修お役立ちマニュアル】
パワハラ防止法を弁護士が徹底解説|職場のパワハラ回避法
今さら聞けないパワハラ防止法をわかりやすく解説。典型例や企業の対応義務、違反リスクまで専門家の視点でまとめました。

目次
- パワハラ防止法とは
- 制定の背景と目的
- 企業が負う義務
- パワハラの典型例と境界線
- 企業が取るべき具体的な防止措置
- 違反した場合の影響とリスク
- 労働者が知っておくべきポイント
- まとめ:主要学びと次アクション
- FAQ(よくある質問)
- 参考・情報源
パワハラ防止法とは

パワハラ防止法とは、労働施策総合推進法の改正により新設された規定で、職場におけるパワーハラスメント(優越的な関係を背景とした業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動で、労働者の就業環境を害するもの)の防止を目的とした法律です。企業に対して、防止措置を講じる義務を課し、働く人を守る仕組みを整備しました。
制定の背景と目的
社会的要請の高まり
過労自殺やメンタル不調が社会問題化するなかで、厚生労働省の調査でも「パワハラを受けたことがある」と回答する労働者は多数にのぼりました。この現状を受け、法的に防止措置を義務づける必要性が生まれました。
目的
単なるモラル規範にとどまらず、企業の組織文化を変え、健全な労働環境を確保することが狙いです。従業員の心身の健康を守るとともに、生産性や企業イメージの維持向上にも直結します。
企業が負う義務
就業規則の整備
パワハラの定義、禁止規定、懲戒事由を明確にし、労働者に周知徹底する義務があります。
相談窓口の設置
社内外に相談窓口を設け、迅速かつ適切に対応できる体制を整える必要があります。
再発防止措置
事案発生後には被害者へのケアや加害者への指導・処分を行い、再発を防ぐ仕組みづくりが求められます。
パワハラの典型例と境界線
典型的な6類型
- 身体的な攻撃(暴行・傷害)
- 精神的な攻撃(侮辱・罵倒)
- 人間関係からの切り離し(隔離・無視)
- 過大な要求(遂行不可能な業務)
- 過小な要求(能力以下の仕事を強要)
- 個の侵害(プライバシー侵害)
指導との違い
「業務上必要かつ相当な範囲」を超えたかどうかが境界線です。注意や指導は職務上必要な行為ですが、人格否定や長時間の叱責はパワハラに該当します。
企業が取るべき具体的な防止措置
教育研修の実施
管理職・従業員向けにハラスメント研修を定期的に行い、意識向上と行動変容を促すことが有効です。
相談体制の強化
匿名相談や外部専門家の活用により、安心して声を上げられる仕組みを整備します。
迅速な事後対応
事案発覚時には事実関係の調査、被害者保護、加害者への処分を速やかに行う必要があります。
違反した場合の影響とリスク
行政指導
厚生労働省や労働局から是正指導を受ける可能性があります。
民事責任
被害者が損害賠償を請求するケースもあり、企業の賠償責任が問われることがあります。
企業イメージへの打撃
報道や口コミによる社会的信用失墜は、採用活動や取引関係に大きな影響を与えます。
労働者が知っておくべきポイント
記録を残す
メール、録音、日記などで被害状況を客観的に残すことが重要です。
相談窓口の活用
社内相談窓口や労働局の総合労働相談コーナーを利用し、早期に相談しましょう。
外部機関への相談
弁護士や労働組合など、外部の専門家に相談することも選択肢の一つです。
まとめ:主要学びと次アクション
- パワハラ防止法は企業に防止措置義務を課す法律である
- 典型例6類型を理解し、指導との境界を認識することが重要
- 企業は相談窓口・研修・迅速対応を整備する必要がある
- 労働者は証拠を残し、相談体制を積極的に活用することが鍵
次アクション:自社の就業規則や相談体制を確認し、必要に応じて外部専門家に相談する準備を整えておきましょう。
FAQ(よくある質問)
Q1. パワハラ防止法はすべての企業に適用されるのですか?
はい。大企業・中小企業を問わず、全ての事業主が対象です。
Q2. 厳しい指導とパワハラの違いはどこにありますか?
業務上必要かつ相当な範囲を超えるかどうかです。人格否定や不必要な長時間の叱責はパワハラになります。
Q3. 被害を受けた場合、どこに相談すればいいですか?
社内の相談窓口、労働局の相談コーナー、弁護士など外部専門家に相談できます。
Q4. 企業が違反した場合、罰則はありますか?
直接的な刑事罰はありませんが、行政指導や損害賠償請求、企業イメージの失墜といった大きなリスクがあります。
参考・情報源
- 厚生労働省「職場におけるハラスメント対策」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188010.html
- 独立行政法人 労働政策研究・研修機構「ハラスメントに関する調査研究」 https://www.jil.go.jp/
- 日本弁護士連合会「職場におけるハラスメント問題」 https://www.nichibenren.or.jp/