パワハラ通報が発生した時の人事労務向け対応マニュアル

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【パワハラ加害者・パワハラ行為者への対応方法の豆知識】
パワハラ通報が発生した時の人事労務向け対応マニュアル

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目次

 

はじめに:なぜパワハラ対応マニュアルが必要か

近年、職場におけるパワーハラスメント(以下、パワハラ)は社会問題化しており、厚生労働省による「パワハラ防止法」(改正労働施策総合推進法)に基づき、企業には防止措置の義務が課されています。
人事労務担当者は、通報を受けた際に迅速かつ適切に対応することで、企業の法的リスクを低減し、従業員の安心・信頼を守る役割を担っています。そのため、明確な対応マニュアルを整備しておくことは極めて重要です。

 

パワハラの定義と判断基準

パワハラの定義は厚労省の指針で「優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超えて、労働者の就業環境を害する言動」とされています。
典型的な6類型として以下が挙げられます。

  • 身体的な攻撃(暴行・傷害)
  • 精神的な攻撃(脅迫・侮辱・人格否定)
  • 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し)
  • 過大な要求(不可能なノルマ、過剰業務)
  • 過小な要求(仕事を与えない)
  • 個の侵害(私的なことへの過干渉)

人事労務担当者は、通報内容がこれらに該当するかを客観的に判断する必要があります。

 

通報があった際の初動対応フロー

 

3-1. 通報受付時の基本姿勢

通報者に寄り添い、事実確認を急がず、安心して話せる環境を整えることが重要です。

  • 否定や先入観を持たずに傾聴する
  • プライバシーを守ることを明確に伝える
  • 感情的にならず、中立的に対応する

3-2. 通報内容の記録と証拠保全

通報内容は逐一記録し、証拠として保存します。日時・場所・関係者・状況を正確に記録し、メールやチャットのログ、業務日報なども可能な限り確保します。

3-3. 通報者への一次対応(安心の提供)

通報者には「適切に対応する」と明言し、不利益な取り扱いがないことを保証します。必要に応じてメンタルヘルス支援や外部相談窓口の案内を行うことも有効です。

 

調査プロセスの進め方

 

4-1. 調査チームの編成と中立性確保

調査は人事部門だけでなく、法務部門や外部の専門家を含めることで中立性を担保できます。

4-2. ヒアリングの実施方法

被害者・加害者・第三者の順に丁寧に聴取し、発言の一貫性や客観的裏付けを確認します。

  • 1対1で行う
  • 記録を残す
  • 誘導尋問を避ける

4-3. 証拠の収集と分析

メール、チャット、録音などを客観的に整理し、法律上のパワハラに該当するかを検討します。

 

加害者・被害者双方への対応

 

5-1. 被害者のケアと再発防止措置

被害者に対しては配置転換、休暇取得、カウンセリング支援などを検討します。二次被害を防ぐことが最重要です。

5-2. 加害者への説明責任と処分検討

加害者に対しては事実確認の上、注意指導、降格、懲戒処分などを適切に行います。その際、処分基準を明確にし、不当な差別がないようにします。

 

社内への周知と再発防止策

 

6-1. 就業規則・ハラスメント防止規程の見直し

パワハラ防止の規程を明文化し、従業員に周知することが必要です。

6-2. 研修・教育プログラムの実施

管理職を中心に、パワハラ防止研修を定期的に実施し、意識啓発を行います。

6-3. 通報窓口の改善と信頼性向上

匿名通報や外部窓口の設置など、従業員が安心して相談できる体制を整えることが重要です。

 

パワハラ通報を適切に処理しない場合、企業は損害賠償請求や行政指導、企業イメージの毀損といったリスクを負います。
労務担当者は「迅速」「公平」「記録重視」を徹底し、常に法令遵守を念頭に置く必要があります。

 

まとめ:迅速・公平・誠実な対応が信頼を守る

パワハラ通報への対応は、企業文化の健全性を示す試金石です。
人事労務担当者は、通報者の安心を守り、適切な調査と公平な判断を行うことで、組織全体の信頼を守ることができます。
本マニュアルを参考に、実務に即したパワハラ対応体制を整備することが望まれます。

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