Column –
【パワハラ加害者・パワハラ行為者への対応方法の豆知識】
パワハラ加害者向け研修にカウンセリング要素を組み込む重要性
パワハラ加害者向け研修にカウンセリング要素が必要な理由を専門的に解説。知識研修だけでは再発防止が難しい背景、心理的要因、企業リスク管理の実務ポイントが分かります。

職場のパワーハラスメント問題において、「加害者向け研修」は再発防止の中核を担います。しかし、単なる知識提供やルール説明だけでは、行動変容が定着しないケースが少なくありません。本記事では、なぜパワハラ加害者向け研修にカウンセリングの要素を組み込むことが重要なのかを、心理学・労務管理・企業実務の観点から体系的に解説します。
パワハラ加害者研修に求められる本質的役割
懲罰ではなく再発防止が目的
パワハラ加害者向け研修の目的は、処罰や形式的な謝罪ではありません。最も重要なのは、同様の行為を二度と起こさせないことです。行動の背景にある思考や感情を理解し、修正する仕組みが不可欠となります。
企業全体の健全性を守る機能
加害者への適切な研修は、被害者保護だけでなく、組織全体の信頼回復や風土改善にも直結します。表面的な対応では、周囲の従業員が「本当に改善されるのか」と不信感を抱く恐れがあります。
法令遵守だけでは不十分
労働施策総合推進法などに基づく対応は最低限の枠組みです。実効性のある再発防止には、個人の内面に踏み込む支援が求められます。
知識研修だけでは再発防止が難しい理由
「分かっている」と「できる」は別
多くの加害者は、研修で「パワハラがいけないこと」は理解します。しかし、実際の現場では感情が先行し、同じ行動を繰り返すケースが少なくありません。これは知識と行動の乖離によるものです。
ストレスと感情処理の問題
業務過多、役割葛藤、評価不安などのストレスが高まると、人は合理的判断が難しくなります。感情を適切に言語化・処理できない場合、攻撃的行動として表出しやすくなります。
無意識の認知の歪み
「部下のために厳しくしている」「自分は正しい」という思い込み(認知の歪み)があると、注意喚起や指導がパワハラに変質します。知識研修だけでは、この無意識層に届きません。
カウンセリング要素とは何か
カウンセリングの定義
カウンセリングとは、対話を通じて本人が自分の感情・思考・行動の関係性に気づき、より適応的な選択をできるよう支援する専門的プロセスです。
研修における具体的要素
- 感情の言語化支援(怒り・不安・焦りなど)
- 行動の引き金となる思考パターンの整理
- 安全な場での振り返りと内省
医療行為ではない点の明確化
企業研修におけるカウンセリング要素は、治療を目的とするものではありません。あくまで職場行動の改善に焦点を当てた支援であり、法的にも実務的にも区別されます。
カウンセリング要素を組み込むことで得られる効果
行動変容の定着
自分の感情や思考に気づくことで、「なぜあの場面で強い言葉を使ったのか」を理解でき、次の選択肢を持てるようになります。
被害者への二次加害防止
形式的な反省ではなく内省が進むことで、被害者への不用意な接触や自己正当化を防ぐ効果があります。
管理職としての健全な指導力向上
感情調整力が高まることで、指導とハラスメントの線引きを実践的に理解でき、結果としてマネジメント力の向上につながります。
企業リスクマネジメントとの関係
再発時の企業責任
同一人物による再発は、企業の管理責任が問われやすくなります。実効性のある研修を実施したかどうかは、重要な判断材料となります。
形骸化した研修のリスク
チェックリスト的な研修は、「やったこと」にしかなりません。結果として、企業のリスク低減につながらない可能性があります。
説明責任への対応
カウンセリング要素を含む研修は、「なぜ改善が見込めるのか」を合理的に説明しやすく、社内外への説明責任を果たしやすくなります。
研修設計で押さえるべきポイント
個別性への配慮
加害に至る背景は人それぞれ異なります。画一的な内容ではなく、一定の個別対応が必要です。
安全性の確保
評価や処分と切り離された安全な対話環境がなければ、表面的な発言に終始してしまいます。
専門性の担保
心理学・労務管理・ハラスメント実務に精通した専門家が関与することで、研修の信頼性と効果が高まります。
実務現場での導入時の注意点
被害者支援との線引き
加害者支援が被害者軽視と受け取られないよう、被害者対応と並行して進める必要があります。
社内説明の重要性
「なぜカウンセリング要素が必要なのか」を管理職や人事が理解していないと、誤解や反発を招く恐れがあります。
継続的フォロー
一度きりの研修ではなく、一定期間のフォローアップを組み込むことで効果が維持されます。
まとめ:主要な学びと次のアクション
- 知識研修だけでは再発防止は難しい
- 感情・思考に働きかけるカウンセリング要素が行動変容を促す
- 企業リスク管理の観点からも有効性が高い
- 専門性と安全性を確保した設計が不可欠
FAQ
加害者向け研修にカウンセリングを入れても法的問題はありませんか?
医療行為ではなく行動改善を目的とするため、適切に設計すれば問題ありません。
全員に個別対応が必要ですか?
必ずしも完全個別である必要はありませんが、一定の個別要素は効果を高めます。
管理職以外にも有効ですか?
有効です。立場に関わらず、感情調整と認知理解は重要です。
社内で実施できますか?
可能ですが、専門性や中立性の観点から外部専門家の活用が推奨されます。
参考・情報源
- 厚生労働省「職場におけるハラスメント対策」https://www.mhlw.go.jp/
- 日本産業カウンセラー協会「産業カウンセリングとは」https://www.counselor.or.jp/
- ILO「Violence and harassment in the world of work」https://www.ilo.org/
