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【パワハラ加害者・パワハラ行為者への対応方法の豆知識】
パワハラ行為者を降格させる時の注意点 法的リスクと再発防止の実務ガイド
パワハラ行為者を降格させる際の注意点を、法的リスク・手続の相当性・再発防止の観点から専門的に解説。無効判断や紛争を防ぐために企業・人事が押さえるべき実務ポイントを網羅します。

パワーハラスメント(以下、パワハラ)が確認された場合、企業として「降格」という人事措置を検討する場面は少なくありません。しかし、降格は強い不利益変更となるため、対応を誤ると無効判断・損害賠償・組織不信といった二次被害を招きます。本記事では、「降格の注意点」を、法的観点・実務運用・再発防止の三位一体で整理します。
降格が問題になりやすい理由
降格は「懲戒」ではなく「人事権行使」
降格は懲戒処分と混同されがちですが、法的には人事権の行使に該当します。そのため、懲戒処分のように就業規則上の明確な根拠がなくても実施できる場合がありますが、その分、合理性・相当性が厳しく問われます。
給与・評価への影響が大きい
役職の変更に伴い賃金が下がる場合、労働条件の不利益変更と評価される可能性があります。特に基本給が下がるケースでは、本人同意や高度な合理性が必要とされます。
「感情的処分」と見なされやすい
パワハラ事案では、被害者保護を急ぐあまり、十分な調査や説明を省略してしまうことがあります。その結果、「見せしめ」「報復的人事」と評価され、紛争化しやすくなります。
降格が有効と判断される基本要件
業務上の必要性があること
裁判例では、降格が有効とされるために「当該役職に適格性を欠く具体的事情」が求められます。パワハラ行為が管理職としての適格性を損なうものであれば、業務上の必要性が肯定されやすくなります。
手続の相当性
事実確認、本人への弁明機会付与、検討過程の記録など、プロセスの適正さが不可欠です。結果だけでなく過程の透明性が重視されます。
不利益の程度が過大でないこと
行為の内容・頻度・影響に比して、降格の影響が過度でないかが判断されます。軽微な言動に対し大幅な処遇低下を行うと、無効と判断されるリスクが高まります。
パワハラと降格の関係を整理する
パワハラは直ちに降格理由になるのか
結論から言えば「ケースバイケース」です。パワハラの内容が、継続的・悪質であり、是正指導後も改善が見られない場合には、降格の合理性が認められやすくなります。
「一度の言動」での降格は慎重に
単発の不適切発言のみで降格を行うと、過剰反応と評価される可能性があります。注意・指導・研修などの段階的対応を踏んだかどうかが重要です。
被害者感情との切り分け
被害者の納得感は重要ですが、それのみを根拠に処分を決めることはできません。企業判断としての客観性が不可欠です。
降格実施前に必ず行うべきプロセス
事実調査と記録化
ヒアリング結果、メール、チャットログなど、客観資料を整理し、事実と評価を分けて記録します。
本人への説明と弁明機会
一方的な通告は避け、事実認識と見解を確認します。このプロセス自体が、後の紛争予防に直結します。
他の選択肢の検討
降格以外に、配置転換、指導研修、役割変更などの代替策を検討したかどうかも重要な判断材料です。
降格時に特に注意すべきポイント
懲戒処分との二重評価を避ける
同一事案について懲戒処分と降格を併用すると、「二重処分」と評価されるおそれがあります。位置づけを明確に分ける必要があります。
説明文書の表現
「罰」「制裁」といった表現は避け、「役割適合性」「組織運営上の判断」といった中立的表現を用います。
社内周知の範囲
必要以上に情報を開示すると、名誉侵害や職場風土悪化につながります。周知範囲は最小限に留めます。
降格だけで終わらせない再発防止策
行為者への再教育・支援
感情コントロール、指導方法、コミュニケーションに関する研修や個別支援を組み合わせることで、再発防止の実効性が高まります。
組織側の環境調整
過重業務、曖昧な権限設計など、パワハラを誘発する構造的要因の見直しも不可欠です。
フォローアップの設計
一定期間後の面談や評価確認を行い、改善状況を確認します。監視ではなく支援として位置づけることが重要です。
人事・管理職が陥りやすい失敗例
「世論対策」としての降格
社内外の批判を沈静化させる目的での拙速な降格は、長期的にはリスクを増大させます。
記録を残していない
口頭指導のみで記録がない場合、後に合理性を立証できません。
再発防止策がない
降格後の支援を行わないと、配置先で同様の問題が再発する可能性があります。
FAQ
Q. パワハラが認定されたら必ず降格が必要ですか?
A. 必ずしも必要ではありません。行為の程度や改善可能性に応じ、指導や配置転換など他の措置も検討されます。
Q. 本人の同意がなくても降格できますか?
A. 可能な場合もありますが、不利益が大きい場合は合理性が厳しく問われます。
Q. 降格後に賃金を下げても問題ありませんか?
A. 基本給の引下げは特に慎重な判断が必要です。代替策の検討が重要です。
Q. 被害者が強く降格を求めていますが応じるべきですか?
A. 被害者感情は重要ですが、企業判断としての客観性が優先されます。
まとめ|主要な学びと次のアクション
- 降格は強い不利益変更であり、合理性と手続が不可欠
- パワハラ=即降格ではなく、段階的対応が重要
- 記録化・説明・代替策検討がリスクを下げる
- 再発防止策をセットで設計することで組織改善につながる
次のアクションとして、人事・管理職は就業規則の整合性確認と対応フローの文書化から着手することが有効です。
参考・情報源
- 厚生労働省「職場におけるハラスメント対策」https://www.mhlw.go.jp/
- 労働政策研究・研修機構「人事権と懲戒処分」https://www.jil.go.jp/
- 日本弁護士連合会「労働問題Q&A」https://www.nichibenren.or.jp/
