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【パワハラ加害者・パワハラ行為者への対応方法の豆知識】
パワハラ加害者対応マニュアル|人事必携
人事労務担当者必見。パワハラ加害者への正しい対応方法を徹底解説。調査・懲戒・再発防止まで網羅した実務マニュアルです。

目次
- パワハラ加害者対応が重要な理由
- 法的枠組みと企業の義務
- 初期対応の基本ステップ
- 加害者へのヒアリングと調査
- 再発防止策と教育研修
- 懲戒処分と就業規則との関係
- メンタルケアと職場環境改善
- まとめと今後のアクション
- FAQ(よくある質問)
- 参考・情報源
パワハラ加害者対応が重要な理由

パワーハラスメント(パワハラ)は、被害者の心身に深刻な影響を及ぼすだけでなく、 企業の生産性低下や法的リスクを引き起こします。特に加害者への適切な対応を怠ると、 被害者の離職や訴訟リスク、さらには企業の社会的信用失墜につながります。
人事労務担当者に求められるのは、加害者を一方的に処罰するのではなく、 「事実確認」「再発防止」「組織文化の改善」を三位一体で実施する姿勢です。
法的枠組みと企業の義務
パワハラ防止義務
労働施策総合推進法では、企業にパワハラ防止措置を講じる義務が明記されています。 これは大企業だけでなく中小企業も対象です。具体的には相談窓口設置、再発防止研修、 事後対応の仕組みづくりなどが求められます。
法的リスク
加害者への対応を誤ると、企業は「安全配慮義務違反」として損害賠償責任を負う可能性があります。 裁判例では、企業が適切に調査・対応しなかった場合に高額の賠償命令が下される事例もあります[参考]。
就業規則との整合性
懲戒処分を行う際には、就業規則に基づき適正な手続きを踏む必要があります。 あらかじめ「ハラスメント行為を懲戒対象とする」旨を明記しておくことが重要です。
初期対応の基本ステップ
迅速な事実確認
被害申告を受けた際には、まず迅速に事実確認を行います。証拠(メール、録音、目撃証言など)を収集し、 感情に流されず中立的な姿勢を保ちましょう。
被害者の安全確保
被害者が安心して働ける環境を確保することが最優先です。加害者と物理的・業務的に距離を取る配置換えや、 休養の選択肢を提示することも検討します。
記録の徹底
初期対応の全ての経過を記録に残すことが、後の法的リスク対策につながります。 面談記録・調査メモ・対応方針を文書化しておくことが必須です。
加害者へのヒアリングと調査
公平な手続き
加害者からも必ず意見を聴取し、公平な調査を行います。一方的に「加害者=悪」と決めつけず、 事実を冷静に積み重ねることが必要です。
調査の手順
- 第三者(弁護士や社外専門家)を交えた調査委員会の設置
- 関係者へのヒアリングと記録
- 客観的証拠の収集と検証
調査結果のフィードバック
調査結果は、被害者・加害者双方にフィードバックし、透明性を担保します。 ただし、個人情報保護の観点から配慮が必要です。
再発防止策と教育研修
加害者への教育
加害者に対しては、再発防止研修を義務づけることが有効です。 コミュニケーション改善やアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)への理解を深める内容が有効です。
組織全体への研修
加害者個人だけでなく、組織全体に「ハラスメントを許さない文化」を浸透させる必要があります。 定期的な研修やeラーニングを通じて全社員が共通理解を持つことが大切です。
フォローアップ
研修後も定期的に行動を観察し、必要に応じて追加指導を行うことが望まれます。
懲戒処分と就業規則との関係
処分の種類
懲戒処分には「戒告・けん責」「減給」「出勤停止」「降格」「懲戒解雇」などがあります。 行為の悪質性や継続性に応じて適切な処分を検討します。
懲戒の留意点
- 就業規則に明記されていること
- 処分の相当性(過度に重すぎないこと)
- 手続きの適正性(弁明の機会を与えること)
懲戒後のフォロー
処分後も加害者を放置するのではなく、再教育や配置転換などを通じて職場復帰を支援する必要があります。
メンタルケアと職場環境改善
被害者への支援
被害者への心理的ケアは最優先事項です。産業医やEAP(従業員支援プログラム)を活用し、 専門家によるメンタルサポートを提供することが推奨されます。
加害者のメンタルケア
加害者もストレスや心理的問題を抱えているケースがあります。必要に応じてカウンセリングを行い、 行動改善をサポートします。
職場文化の改善
職場全体の心理的安全性を高めるため、風通しの良いコミュニケーションや相談しやすい環境づくりを進めることが重要です。
まとめと今後のアクション
主要な学び
- 加害者対応は「事実確認」「再発防止」「組織文化改善」が鍵
- 法的義務と就業規則を遵守することが企業防衛につながる
- 懲戒処分だけでなく教育・メンタルケアが必要
人事労務担当者が今すぐできること
- 就業規則にハラスメント規定が明記されているか確認する
- 相談窓口と調査手順を整備する
- 研修計画を立て、加害者・管理職・全社員への教育を実施する
FAQ(よくある質問)
Q1: パワハラ加害者に対してすぐに懲戒解雇できますか?
A1: 行為の悪質性や継続性に応じます。軽微な行為でいきなり解雇すると不当解雇とされる可能性があるため、事実調査と適正手続きが必要です。
Q2: 加害者の言い分も聞く必要がありますか?
A2: はい。公平性を確保するために必ず加害者にも弁明の機会を与えることが重要です。
Q3: 調査記録はどの程度残すべきですか?
A3: 面談内容、証拠、調査経過、対応方針などすべて文書化して残すことが望ましいです。訴訟時の重要な証拠となります。
Q4: 再発防止の研修は義務ですか?
A4: 法的に明確な義務ではありませんが、企業の再発防止責任を果たす上で実施が強く推奨されます。
Q5: 被害者が加害者の処分に納得しない場合はどうすべきですか?
A5: 調査結果と処分理由を丁寧に説明し、必要に応じて追加のケアや環境改善策を提示します。
参考・情報源
- 厚生労働省「職場におけるハラスメント防止のために」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000187997.html
- 労働政策研究・研修機構「職場のハラスメントに関する調査」 https://www.jil.go.jp/
- 独立行政法人労働安全衛生総合研究所「職場のメンタルヘルス」 https://www.jniosh.johas.go.jp/
- 日本労働組合総連合会「ハラスメント防止対策」 https://www.jtuc-rengo.or.jp/