Column –
【パワハラ加害者・パワハラ行為者への対応方法の豆知識】
パワハラ防止協会が解説|法令対応・相談窓口・実践研修とは?
パワハラ防止協会が、法令対応の基本から相談窓口の設計、再発防止につながる実践研修までを専門的に解説。人事・管理職が今すぐ役立てられる実務視点の記事です。

職場におけるパワーハラスメント(以下、パワハラ)は、個人の尊厳を傷つけるだけでなく、組織の生産性・信頼性・持続性を大きく損なう重大なリスクです。企業には法令対応としての防止措置が求められる一方で、「どこまで対応すれば十分なのか」「相談が来たときにどう動けばよいのか」「再発防止まで含めた実践策が分からない」といった声も多く聞かれます。
本記事では、一般社団法人パワーハラスメント防止協会の知見をもとに、パワハラ防止に必要な法令対応、相談窓口の設計、そして現場で機能する実践研修の考え方を体系的に解説します。人事・総務・管理職の方はもちろん、組織づくりに関わるすべての方にとって、実務に直結する内容を目指しています。
パワハラ防止が求められる背景
職場トラブルから経営リスクへ
パワハラは「個人間のトラブル」と捉えられがちですが、実際には離職率の上昇、メンタルヘルス不調による休職、訴訟リスク、企業ブランドの毀損など、経営全体に波及するリスクです。特に管理職による言動が問題となるケースでは、組織構造そのものが問われることになります。
被害者・加害者の二項対立では解決しない
パワハラ問題は「加害者が悪い」「被害者を守る」という単純な構図では解決しません。多くの場合、業務過多、役割不明確、評価制度、コミュニケーション文化など、組織的要因が背景に存在します。防止策には、個人と組織の両面からのアプローチが不可欠です。
未然防止と再発防止の重要性
問題が顕在化してから対応する「事後対応」だけでは不十分です。未然防止(起きにくい環境づくり)と、発生後の再発防止(同じ構造を繰り返さない仕組みづくり)を両立させることが、持続可能な組織運営につながります。
法令が求めるパワハラ防止措置
事業主に求められる基本的な義務
関係法令では、職場におけるパワハラを防止するため、事業主に対して以下のような措置を求めています。
- パワハラを行ってはならない旨の方針明確化と周知
- 相談体制の整備(相談窓口の設置)
- 相談があった場合の迅速かつ適切な対応
- 相談者・関係者の不利益取扱いの禁止
「形式対応」と「実効性」の違い
規程やマニュアルを整備するだけでは、実効性は担保されません。現場で理解され、実際に使われる仕組みであるかどうかが重要です。例えば、相談窓口があっても「相談すると不利になるのでは」という不安があれば機能しません。
人事・管理職の役割
人事部門は制度設計と運用の要となり、管理職は日常の言動やマネジメントを通じて防止の最前線に立ちます。両者が役割を理解し、連携することが法令対応の質を高めます。
相談窓口の設計と運用のポイント
相談しやすさを左右する要素
相談窓口の実効性は「安心して相談できるか」にかかっています。匿名性の確保、相談内容の守秘、対応フローの透明化などが重要です。
内部窓口と外部窓口の使い分け
社内の人事窓口だけでなく、外部の専門機関を併用することで、相談者の心理的ハードルを下げることができます。特に上司が関係者となる場合、外部窓口の存在は大きな意味を持ちます。
相談対応者に求められるスキル
相談を受ける担当者には、傾聴(相手の話を遮らずに聴く姿勢)、中立性、事実と感情を切り分ける力が求められます。専門的な研修を受けていない場合、二次被害を生むリスクもあります。
実務で機能する初動対応と調査
初動対応の重要性
相談を受けた直後の対応は、その後の信頼関係を大きく左右します。「まず話を聴く」「評価や断定をしない」「今後の流れを説明する」といった基本を徹底することが重要です。
事実確認と調査の進め方
調査では、当事者双方の話を聴き、客観的事実(メール、記録、第三者の証言など)を確認します。感情的な主張と事実を切り分ける姿勢が求められます。
判断と是正措置
事実関係を踏まえ、組織としての判断を行います。その際、懲戒だけで終わらせるのではなく、配置転換、業務調整、研修など、再発防止につながる是正措置を検討することが重要です。
再発防止につながる実践研修とは
知識提供型研修の限界
法令や定義を説明するだけの研修では、行動変容は起きにくいのが実情です。「分かったつもり」になっても、現場のストレス状況では同じ言動を繰り返してしまうケースが多く見られます。
行動に焦点を当てた研修設計
実践研修では、具体的な場面を想定し、「どの言動がリスクになるのか」「代替行動は何か」を考えます。ロールプレイやケーススタディを通じて、現場で使える判断力を養います。
加害者更生・管理職支援の視点
問題行動を起こした管理職に対しても、「排除」ではなく「再発防止と成長支援」の視点が重要です。本人の特性や置かれている環境を整理し、持続的な行動改善を支援します。
パワハラ防止協会の支援内容
第三者専門機関としての役割
パワハラ防止協会は、企業から独立した第三者の立場で、制度設計、相談対応支援、研修提供を行います。利害関係のない立場だからこそ、中立的な助言が可能です。
組織に合わせたオーダーメイド支援
業種、規模、組織文化によって、最適な防止策は異なります。画一的なパッケージではなく、実態に即した支援を行うことが特徴です。
継続的なフォローアップ
一度の研修や制度導入で終わらせず、定期的な見直しやフォローアップを行うことで、形骸化を防ぎます。
よくある誤解と注意点
「厳しい指導=パワハラ」ではない
業務上必要な指導がすべてパワハラに該当するわけではありません。重要なのは、業務上の必要性、相当性、言動の態様です。
被害者対応だけでは不十分
被害者のケアは重要ですが、加害行為が起きた構造を見直さなければ、同様の問題は繰り返されます。
放置が最大のリスク
「様子を見る」「大ごとにしたくない」という判断が、結果的にリスクを拡大させることがあります。早期対応が最も有効なリスクマネジメントです。
まとめ|主要な学びと次のアクション
- パワハラ防止は法令対応と実効性の両立が重要
- 相談窓口は「設置」より「使われる設計」が鍵
- 初動対応と再発防止策が組織の信頼を左右する
- 実践研修は行動変容に焦点を当てる
まずは、自社の相談体制や研修内容が「実際に機能しているか」を点検することから始めてみてください。
FAQ|よくある質問
- Q. 小規模企業でもパワハラ防止措置は必要ですか?
- A. 規模に関わらず、職場環境配慮の観点から重要です。簡易な形でも対応が求められます。
- Q. 相談が虚偽だった場合はどうなりますか?
- A. 事実確認を行い、故意の虚偽と判断される場合は、就業規則等に基づき適切に対応します。
- Q. 管理職研修はどのくらいの頻度で行うべきですか?
- A. 定期的な実施と、昇格時などの節目での実施が効果的です。
参考・情報源
- 厚生労働省「職場におけるハラスメント対策」 https://www.mhlw.go.jp/
- 労働政策研究・研修機構「ハラスメントに関する調査研究」 https://www.jil.go.jp/
- 日本産業カウンセラー協会 https://www.counselor.or.jp/
