パワハラ加害者という存在に意味はあるのか?組織心理・人間行動科学

パワハラ加害者という存在に意味はあるのか?組織心理・人間行動科学

Column –
【パワハラ加害者・パワハラ行為者への対応方法の豆知識】
パワハラ加害者という存在に意味はあるのか?組織心理・人間行動科学

パワハラ加害者はなぜ生まれるのか。その存在に意味はあるのかを、組織心理・行動科学・ハラスメント研究の視点から深く解説し、再発防止策と本質的な学びを提示します。

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パワハラ加害者は“個人の問題”ではないのか?

パワーハラスメント(以下、パワハラ)は、しばしば「加害者の性格に問題がある」「特定の個人が悪い」という文脈で語られがちです。しかし、労働政策研究機関や産業保健領域の研究では、加害行動の多くは個人単体ではなく、組織構造・権力配置・文化・職場環境が複合的に作用して生まれると示されています。

つまり、パワハラ加害者という存在は、単なる「性格の悪さ」では説明ができず、組織が持つ何らかの機能不全や偏りが背景に存在する可能性が高いのです。

この視点に立つことで、「パワハラ加害者の存在に意味があるのか?」という問いを、より深い構造レベルで理解できるようになります。

 

“悪い人”という単純化では対策が進まない理由

加害者像を単純な「悪人」とする見方は、心理学では基本的帰属の誤り(Fundamental Attribution Error)と呼ばれます。人の行動を性格だけで説明し、環境要因を過小評価する認知バイアスです。

パワハラの防止を進めるには、性格論ではなく、行動が生起した背景・条件・トリガーに目を向ける必要があります。

 

組織がつくり出す「加害行動の温床」

厚生労働関連調査でも、パワハラが発生しやすい組織は以下の特徴を複数持つ傾向があるとされています。

  • 管理職研修が不足している
  • 評価基準が曖昧で、属人的なマネジメントが横行する
  • 人員不足で余裕がない
  • 相談窓口が機能していない
  • 上司に逆らえない階層文化

これらの環境が整ってしまうと、個人の資質とは別に、強圧的な言動が出やすくなることが実証的に報告されています。

 

なぜ組織はパワハラ加害者を生み出してしまうのか

ここでは、組織の構造や運営がどのように加害者を“生み出すのか”を整理します。

 

権力構造が強い組織では「行動の逸脱」が起こりやすい

社会心理学では、権力が強まると人は以下の傾向を示しやすくなるとされています。

  • 相手の感情への共感が低下する
  • 衝動的な言動が増える
  • 相手を手段として見る傾向が強まる

これらはパワハラ行動を引き起こしやすい心理状態と一致しており、組織が強いヒエラルキーを持つほどリスクが高まります。

 

成果主義の誤用により攻撃的マネジメントが正当化される

「結果さえ出せばよい」という評価制度は、攻撃的マネジメントを助長し、「強く言うのは正しい」という誤解を生みます。その結果、部下の尊厳より短期成果を優先する文化が形成されます。

 

組織の“暗黙のルール”が行動規範をゆがめる

例えば以下のような暗黙ルールがある場合、パワハラが常態化しやすくなります。

  • 「上司の意見には絶対服従」
  • 「長時間働くことが正義」
  • 「厳しさは成長のため」

これらは表向きの規程では否定されていても、実務運営の中で残存し続けることが多く、その矛盾が現場のハラスメント行動を誘発します。

 

加害行動の背景にある心理メカニズム

心理学・行動科学の観点から、加害行動が生起するメカニズムを紐解きます。

 

ストレス・マネジメント不全が攻撃性を増幅させる

慢性的なストレス状態では、理性をつかさどる前頭前野の働きが低下し、感情制御が難しくなることが実証的に示されています。そのため、

  • 怒りの爆発
  • 威圧的な言動
  • 相手への配慮の欠如

が起こりやすくなります。

 

成功体験の偏りによる“誤った確信”

過去に強圧的指導で成果を出した人ほど、「厳しくすれば部下は動く」と強く信じてしまう傾向があります。「成功体験バイアス」と呼ばれ、行動修正を妨げます。

 

認知の歪みが“正しい指導”と“パワハラ”の線引きを誤らせる

加害者本人はしばしば以下のように認知しています。

  • 「指導しているだけ」
  • 「相手のためを思って言っている」
  • 「甘やかすと成長しない」

認知の歪みが修正されない限り、行動は改善されにくいのが現実です。

 

被害発生を許容してしまう組織文化の特徴

加害者が存在し続ける背景には、組織文化側の要因が強く影響します。

 

「沈黙の合意」が加害者を守る

被害者が声を上げても、組織が黙殺すれば、加害行動は継続します。この状態を組織心理学では沈黙のスパイラルと呼びます。

 

相談窓口が形骸化している

窓口があっても、以下のような問題があると機能しません。

  • 実務運営の権限が弱すぎる
  • 担当者が専門知識を持たない
  • 相談後のフォロー体制が無い

このような状態では、被害者は相談をあきらめ、加害行動は放置され続けます。

 

「成果への圧力」が人間関係より優先される

成果最優先の組織では、管理職が部下を追い込む行動が「やむを得ない」とされてしまうケースがあります。価値観の優先順位が誤ると、ハラスメント被害は増加しやすくなります。

 

「パワハラ加害者の存在に意味があるのか」という本質的な問い

この問いは倫理的かつ哲学的でもあり、組織の存在目的や人材育成の考え方にも深く関わります。

 

“意味”という言葉が内包する三つの側面

この記事では「意味」を次の三つに分けて整理します。

  1. 発生理由としての意味(原因的意味)
  2. 組織に及ぼす影響としての意味(機能的意味)
  3. 社会・組織が学びを得るという意味(教訓的意味)

この三つを区別することで、「存在に意味があるのか」という議論が感情論に埋没せず、構造的に理解できます。

 

原因的意味:組織の“ゆがみ”を可視化する存在

加害者の行動が発生する背景には、必ず組織側の歪みが存在しています。したがって、加害者は「問題を可視化する指標」という意味を持ちます。

これは加害を擁護するものではなく、「加害者を排除しても、構造が残っていれば再発する」という指摘を示すための視点です。

 

機能的意味:組織のリスク管理の甘さを示す警告灯

加害行動は、リスクマネジメントが機能していないサインです。組織はそれを“警告灯”として受け取り、仕組み改善の契機とする必要があります。

 

教訓的意味:組織全体の成長につながる材料となる

パワハラ発生を契機に、以下の改善につながるケースがあります。

  • 評価制度の見直し
  • 管理職研修の充実
  • 相談窓口の強化
  • 組織文化の再定義

つまり、パワハラ加害者の存在は「組織が成長するための鏡」という教訓的意味を持ち得ます。

 

組織が取るべき再発防止策と人材育成の方向性

構造的課題を踏まえると、組織が取るべき対策は「仕組み・教育・文化」の三本柱になります。

 

仕組み:相談体制・評価制度・業務配置の見直し

具体的には以下が重要です。

  • 相談窓口の権限強化
  • 管理職の行動評価項目を明確化する
  • 業務負荷が偏らないように調整する
  • 第三者による外部相談窓口の活用

 

教育:管理職研修で「行動変容」を促す

管理職研修は単なる知識提供ではなく、次の能力を育てる必要があります。

  • 感情マネジメント
  • フィードバック技法(DESC法など)
  • 傾聴スキル
  • アンコンシャスバイアスの理解

 

文化:心理的安全性を基盤とする組織風土

心理的安全性の高い組織では、以下が実現されています。

  • 誰でも意見を述べやすい
  • 失敗しても人格否定されない
  • 上司の指導に透明性がある

文化改善には時間を要しますが、最も効果の高い施策のひとつです。

 

個人ができるセルフディフェンスと早期察知

組織側の対策に加え、個人が取れる行動も存在します。

 

早期察知のポイント

以下の兆候は、パワハラへ発展するリスクが高いとされています。

  • 指導が人格否定に変わる
  • 合理性のない叱責が増える
  • 孤立させる行動がみられる
  • 記録に残さず命令を出す

 

セルフディフェンスとしての記録化

行動記録は、事実関係を整理する上で重要です。メール・メモ・業務記録など、客観的証拠となるものを保管しておくことが推奨されています。

 

相談相手を複数持つことの重要性

一つの窓口だけで解決できないことも多いため、複数の相談ルートを持つことが安全性を高めます。

 

まとめ:主要学びと次アクション

主要学び

  • パワハラ加害者の存在は個人問題ではなく、組織の構造と文化の影響を強く受ける
  • 加害行動は心理的・行動科学的メカニズムによって説明可能であり、対策には構造理解が不可欠
  • 加害の存在は「組織が改善すべき課題」を可視化する役割を持つ

読者が今すぐできる次アクション

  • 職場の相談窓口・人事・外部窓口など複数の相談経路を確認する
  • 職場での違和感や不合理な指示を記録化する
  • 「指導」と「攻撃」の境界を自分なりに整理する
  • 組織側の立場であれば、管理職教育や制度設計の見直しを検討する

 

FAQ

Q1. パワハラ加害者は更生できるのでしょうか?

更生は可能とされていますが、本人の自覚と組織側の研修・支援体制が必要です。特に認知の歪みの修正やフィードバック技法の習得が鍵となります。

Q2. 加害者が異動すれば問題は解決しますか?

一時的には沈静化する場合がありますが、組織構造が変わらなければ再発リスクは高いままです。

Q3. 強い指導とパワハラはどう区別できますか?

人格否定や合理性の欠如、継続性の有無が区別のポイントです。客観的な基準で判断することが重要です。

Q4. 管理職が忙しすぎるとパワハラは増えますか?

研究では、過重負荷がある場合、怒りや衝動のコントロールが低下し、パワハラリスクが高まるとされています。

Q5. パワハラを未然に防ぐ最も効果的な方法は何ですか?

心理的安全性を高める組織文化づくりが最も効果的とされています。制度・教育・環境整備を総合的に行う必要があります。

 

参考・情報源

  • 厚生労働省「職場のハラスメント対策」 https://www.mhlw.go.jp/
  • 東京大学公共政策大学院研究「組織行動とハラスメント行動の関係」 https://www.pp.u-tokyo.ac.jp/
  • 独立行政法人労働政策研究・研修機構「職場のパワーハラスメント調査」 https://www.jil.go.jp/
  • 国際労働機関 ILO「Violence and Harassment in the World of Work」 https://www.ilo.org/

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