パワハラ防止と衛生管理者の役割を徹底解説

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【パワハラ防止研修お役立ちマニュアル】
パワハラ防止と衛生管理者の役割を徹底解説

職場のパワハラ防止における衛生管理者の重要な役割を徹底解説。法的義務、具体的な対応策、再発防止の実務ポイントをわかりやすくまとめました。

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はじめに:なぜ衛生管理者がパワハラ防止に関与するのか

衛生管理者は、本来「労働安全衛生法」に基づき、職場の安全と健康を守る役割を担っています。従来は労働災害や健康診断などの物理的・身体的なリスク管理が中心でした。しかし、働き方の多様化や精神的負荷の増大により、パワーハラスメント(以下、パワハラ)も重大な健康リスクと認識されるようになりました。結果として、衛生管理者は心身両面での健康保持増進の観点から、パワハラ防止に深く関与する必要性が高まっています。

 

パワハラ防止に関する法律の基本

労働施策総合推進法における規定

労働施策総合推進法では、企業に対して「パワハラ防止措置の義務」が課されています。これは、相談窓口の設置や社内規程の整備を通じて、職場におけるハラスメントを未然に防止する仕組みを構築することを求めるものです。

労働安全衛生法との関係

労働安全衛生法は、従業員の健康を確保する包括的な法律であり、近年はメンタルヘルス対策や職場環境改善も重視されています。パワハラによる心身の不調は、衛生管理者の業務範囲に含まれる「健康障害の防止」と密接に関連しています。

企業への影響

パワハラが発生すると、被害者の健康被害だけでなく、生産性低下、離職、企業イメージの悪化といった深刻な影響が及びます。そのため、法令遵守の観点だけでなく経営リスク管理の観点からもパワハラ防止は必須です。

 

衛生管理者の法的役割と責任

衛生管理者の位置づけ

労働安全衛生法に基づき、一定規模以上の事業場には衛生管理者の選任が義務付けられています。衛生管理者は、労働者の健康保持のために必要な措置を企業に提案・実施する専門職です。

パワハラ防止における役割

  • 職場環境の点検(人間関係の摩擦や過重労働の有無を含む)
  • 従業員への相談対応(一次的な聞き取り、産業医や人事部門への橋渡し)
  • 労働衛生委員会でのパワハラ関連議題の提起
  • メンタルヘルス不調者への対応と復職支援との連携

責任の範囲

衛生管理者自身が懲戒や処分を行う権限を持つわけではありません。しかし、健康障害を予防する立場から、ハラスメントが疑われる場合には迅速に情報を関係部署へ共有し、対応を促す責任があります。

 

職場での具体的な取り組み方法

リスクアセスメント

パワハラリスクは「人間関係の不均衡」「職務上の過度な要求」「曖昧な評価基準」などに潜みます。衛生管理者は労働衛生上のリスクアセスメントの一環として、これらの要因をチェックリスト化し、定期的に点検することが有効です。

職場巡視とヒアリング

従来の安全点検だけでなく、休憩時間や雑談時に従業員の声を拾うことで、潜在的なパワハラ兆候を把握することができます。

記録とエビデンス化

パワハラに関する相談や観察結果は、日付・状況・対応を記録し、エビデンスとして保管しておくことが、後の対応や改善に役立ちます。

 

相談・通報システムの整備

相談窓口の設置

衛生管理者は従業員にとって身近な存在であるため、一次的な相談窓口としての役割を果たすことが期待されます。そのうえで、人事部や外部相談窓口へのスムーズな連携体制を整える必要があります。

匿名相談の仕組み

匿名での相談・通報を可能にすることで、従業員が安心して声を上げられる環境を整備できます。衛生管理者は制度設計に関与し、利用状況をモニタリングする役割を持ちます。

第三者機関との連携

産業医、社会保険労務士、外部カウンセラーといった専門家との連携は、客観的で信頼性のある対応につながります。

 

教育研修と再発防止策

管理職研修

管理職はパワハラの加害者にも被害者にもなり得ます。そのため、衛生管理者は管理職研修においてパワハラ防止の観点を盛り込み、実例を交えた教育を推進すべきです。

従業員向け研修

全従業員を対象に「パワハラとは何か」「どのように声を上げれば良いか」を具体的に示す研修を行うことが重要です。衛生管理者は研修設計やファシリテーションに協力できます。

再発防止の仕組み

パワハラが発生した場合には、再発防止策として「職場配置の見直し」「評価制度の透明化」「定期的なフォロー面談」などが有効です。衛生管理者は実施状況のモニタリングを担います。

 

まとめ:主要ポイントと次にすべき行動

  • パワハラは従業員の健康と企業経営に深刻な影響を及ぼす。
  • 衛生管理者は心身の健康を守る立場からパワハラ防止に関与する責務がある。
  • 法令遵守だけでなく、リスクアセスメント・相談対応・研修など具体的行動が求められる。
  • 次にできること:
    ・職場のリスク要因をチェックリスト化する
    ・相談窓口の周知を徹底する
    ・管理職研修にパワハラ防止を組み込む

 

FAQ:よくある質問

Q1. 衛生管理者はパワハラの懲戒処分を決定できますか?

A. いいえ。衛生管理者には懲戒権限はなく、健康障害防止の観点から報告・提案を行う立場にあります。

Q2. パワハラ相談は人事部ではなく衛生管理者にしても良いですか?

A. はい。衛生管理者は一次的な相談窓口として適していますが、必要に応じて人事や産業医と連携することになります。

Q3. 小規模事業場でも衛生管理者は必要ですか?

A. 従業員数によって選任義務の有無は異なりますが、規模を問わずパワハラ防止への取り組みは望ましいとされています。

Q4. 衛生管理者自身がパワハラを受けた場合は?

A. 第三者機関や外部相談窓口を利用するなど、客観的な仕組みを活用することが推奨されます。

 

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参考・情報源

  • 厚生労働省「職場におけるハラスメント防止のために」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000184674.html
  • 厚生労働省「労働安全衛生法」 https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei.html
  • 労働施策総合推進法(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188018.html
  • 独立行政法人労働安全衛生総合研究所 https://www.jniosh.johas.go.jp/

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